研究課題
1,マウスから大動脈を採取後、物理的処理やcollagenase処理にて血管内皮細胞を単離した。細胞をCD157とCD31に対する抗体で染色して陽性細胞をセルソーターを用いて純化した。この細胞分画に血管内皮幹細胞が濃縮していると考えられる。この純化した細胞分画をOP9間質細胞と共培養すると管腔形成が誘導され、血管内皮幹細胞が成熟した血管内皮細胞に分化していると考えられた。この培養系にトロンボモジュリン(TM)を添加して観察を行ったが、管腔形成が促進する結果は得られなかった。OP9が既にトロンボモジュリンを豊富に分泌しているため、外因性のTMの効果が得られなかった可能性が考えられた。従って、現在OP9細胞のTMの発現を遺伝子編集技術を用いてノックダウンしているところである。2,全ての細胞がGFPにて緑色に光るグリーンマウスの骨髄から造血幹細胞を採取して、放射線照射を行い内皮細胞傷害を誘導したマウスに移植した。一定期間経過後にマウスを安楽死させて肝臓を取り出して薄切片を作成して蛍光顕微鏡下に観察した。血管内皮細胞が緑に光っていることが確認できた。このことは、移植した造血幹細胞が血管の傷害部位に接着した後、血管に分化して傷害を修復したことを示唆する。今後、このモデルにTMを投与して傷害血管修復が促進するのか検討する。また、同様の血管障害モデルに血管内皮幹細胞を移植して傷害血管が修復されるのか、またTMが修復を促進するのかを見極める予定である。
2: おおむね順調に進展している
マウスの血管から血管内皮幹細胞を採取することと、これを成熟血管に分化誘導する培養系の確立に成功した。また、造血幹細胞が血管に分化して、障害血管の修復に寄与することを実験動物を用いて証明することができた。
試験管内の実験:間質細胞OP-9の内因性TMの発現をCRISPR/Cas9でノックアウトする。この細胞と血管内皮幹細胞を共培養し、そこにTMあるいは生理食塩水を添加して、TMが血管内皮幹細胞の分化・増殖を刺激するか否かを見極める。実験動物を用いた実験:マウスに放射線照射して血管内皮細胞傷害を誘導する。このマウスにグリーンマウスの大動脈から純化した血管内皮幹細胞を移植して傷害血管が修復されることを確認する。移植後にトロンボモジュリン、あるいはコントロールとして生理食塩水を腹腔内投与して傷害血管の修復が促進されるのか評価する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Sci Signal
巻: 15 ページ: eabd2533
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