研究課題/領域番号 |
20K21586
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
秦野 伸二 東海大学, 医学部, 教授 (60281375)
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研究分担者 |
木村 啓志 東海大学, 工学部, 准教授 (40533625)
大友 麻子 東海大学, 医学部, 助教 (50535226)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / 標的分子シグナル系 / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
血液脳関門(blood-brain barrier; BBB)は、脳血管系循環血液と脳組織との間の物理的バリアであり、脳組織内に毒性を有する様々な分子・物質・ウイルス等から脳組織を保護するために重要な役割を果たしている。しかし、一方でBBB透過性の低さのため、これまでに開発された多くの神経疾患治療薬は適正濃度で脳内に到達できず、その有効性が十分に発揮されないという疾患治療上の重大な問題が生じている。したがって、脳腫瘍を含めた脳神経系疾患治療薬の開発に際しては、多くの薬剤のBBBを介した脳内への高効率なデリバリー法について、より革新的な原理に基づく新たな方法の開発が待たれている。本研究は、我々のこれまでの研究により新たに見出された2種類のBBB透過性調節候補因子alpha-2-HS-glycoprotein(AHSG)および hemopexin(HPX)に注目し、既成概念を打破する新たな原理・手法による新規脳内薬物デリバリー法の開発を目指すものである。本研究では、3年間の研究期間に、1)AHSG及びHPXによる細胞内分子反応系変動の包括的解析研究、2)マイクロ流体デバイスを用いたBBB模倣型細胞培養系の確立、の2項目についての研究を遂行する計画である。初年度である2020年度は、採択後の8月以降、コロナウイルス感染対策による影響を大きく受けたため、研究への取り組みが大幅に遅れている。本年度以降は一定の対策しつつ、研究を軌道に乗せることを第一優先にする。研究計画自体については、修正及び変更の必要はない。従って、今後も当初の研究計画に従って2つの研究テーマに関する研究を遂行する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、3年間の研究期間に、以下の2項目についての研究を遂行する計画である。研究初年度である2020年度は、採択後の8月以降、コロナウイルス感染対策による影響を大きく受けたため、研究への取り組みが大幅に遅れている。本年度以降は一定の対策しつつ、研究を軌道に乗せることを第一優先にする。研究計画自体については、修正及び変更の必要はない。従って、今後も当初の研究計画に従って2つの研究テーマに関する研究を遂行する計画である。 1.AHSG及びHPXによる細胞内分子反応系変動の包括的解析: 該当年度の研究については、研究計画の先行研究の再現実験を行うための細胞培養系の再確認と、各種実験に必要なマテリアル(抗体等)の準備を中心に進めた。特に、培養細胞におけるトランスクリプトーム解析及びプロテオミクス解析を行うためのサンプル調製法等、実験条件を最適化するための検討を進めている段階である。 2.マイクロ流体デバイスを用いたBBB模倣型細胞培養系の確立:血管を模倣したマイクロ流路と、上皮系細胞、グリア細胞、及び神経細胞の連結培養を可能とする3つの独立培養チャンバーを基本構造とするデバイスの設計と作製を行う計画であったが、コロナウイルス感染対策による影響(大学構内への入構制限等)を受け、物品等の購入を開始したものの、研究については実質上成果が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、コロナウイルス感染対策のため研究進捗が大幅に遅れている。本年度以降は一定の対策しつつ、研究を軌道に乗せることを第一優先にする。研究計画自体については、修正及び変更の必要はない。従って、今後も当初の研究計画に従って2つの研究テーマに関する研究を遂行する計画である。 1.AHSG及びHPXによる細胞内分子反応系変動の包括的解析:培養液に精製したAHSG及びHPXを添加した場合と両者を免疫的手法で除去した血清を用いた場合での、培養細胞におけるトランスクリプトーム解析及びプロテオミクス解析を行い、各種シグナル系分子群の変動・動態解析を行う。次に同定した細胞内変動因子のRNA干渉による遺伝子発現阻害あるいは過剰発現により、AHSG及びHPX依存性の生理・薬理効果をもたらす分子シグナル系を明らかにする。さらに、分子シグナル系の最上流因子を同定し、新たなBBB透過性調節候補標的分子の特定を目指す。 2.マイクロ流体デバイスを用いたBBB模倣型細胞培養系の確立:血管を模倣したマイクロ流路と、上皮系細胞、グリア細胞、及び神経細胞の連結培養を可能とする3つの独立培養チャンバーを基本構造とするデバイスの設計と作製を行う。研究が順調に進んだ場合は、設計したBBB模倣型培養システムでの安定した長期培養を可能とするため、デバイス設計及び培養条件の最適化を図る。また、デバイス上で再構築したBBBモデルを用いて、AHSG及びHPXの生理・薬理的作用、すなわち細胞外AHSG及びHPXが神経保護薬の薬効に及ぼす影響を明らかにする。その上で、AHSG及びHPX非存在下で、新規同定候補因子の人為的操作による神経保護薬の薬効及び神経細胞内への取り込みを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度である令和2年度は、研究成果の項目でも述べたとおり、コロナウイルス感染対策のため研究進捗が大幅に遅れる結果となった。そのため、実験実施に必要な物品費の購入が滞るとともに、研究成果発表等のための旅費および研究補助のための人件費等への支出がなくなった。その結果、合計100万円程度の繰越金が生じることとなった。令和2度からの研究費繰越分に関しては、当初の研究計画に従って、細胞培養実験を行うための経費(細胞購入費、培養関連試薬など)、分子生物学・生化学的実験に用いる消耗品費(試薬類、抗体など)、トランスクリプトーム解析のための委託費、およびマイクロ流体デバイス作製のための消耗品として利用する計画である。さらに、研究成果の発表のための旅費・参加費としても利用する計画である。令和3年度に配算される交付金に加えて、これらの研究目的に繰越金を充当することにより、滞った研究計画を加速することができ、研究期間内に目的とする研究成果が得られることが期待される。
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