自己免疫疾患は全身臓器に生じるが、生体内に存在する無数のタンパクのなかで一部のタンパクが自己免疫の標的になりやすい理由は大部分が不明である。本研究の目的は、特定のタンパクが免疫自己の標的となる機序を解明し、それを回避する方法を創出することである。本研究では皮膚の代表的な自己免疫疾患である「水疱性類天疱瘡(BP)」と「尋常性天疱瘡(PV)」を対象とする。発症頻度はPVよりBPが圧倒的に高いことが知られている。本研究ではこれらの疾患に着目してマウスの胸腺を解析し、なぜBPはPVより頻度が高いかを検討した。マウス胸腺の皮膚構造タンパクの発現の網羅的解析のため、マウスの胸腺髄質上皮細胞をソーティングしRNAを回収する方法を確立した。RNA-sequenceでmTECにおけるmRNA発現を網羅的に解析したところ、予想に反してBP180若年マウス胸腺のmTECではBP180(Col17a1)のmRNAはデスモグレイン1やデスモグレイン3に比較しても十分に発現していることが明らかとなった。 また、新規マウスモデルを作製して胸腺での自己抗原の発現を増加させることで「中 枢性免疫寛容の強化は末梢性免疫寛容の機能不全を補完できるかどうか」を検証した。胸腺にBP180を過剰発現させ免疫寛容の破綻を回避できるかどうか検証するため、マウス胸腺のmTECに基底膜部タンパクであるBP180を過剰発現させ、BP180に対する中枢性免疫寛容が回復するかどうかを解析した。ケラチン14(K14)プロモーター下にヒトBP180タンパクを発現し、マウスBP180は欠損している「K14-BP180ヒト化マウス」とTreg欠損マウスを交配して「Treg欠損/K14-BP180ヒト化マウス」を作製して検証したところ、Treg欠損/K14-BP180ヒト化マウスにおいても抗基底膜部抗体が産生されていることが明らかとなった。
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