研究課題/領域番号 |
20K21591
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
乃村 俊史 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50399911)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 魚鱗癬 / revertant mosaicism |
研究実績の概要 |
Ichthyosis with confettiとロリクリン角皮症はそれぞれケラチン1/ケラチン10遺伝子、ロリクリン遺伝子の変異により発症する常染色体優性遺伝性魚鱗癬であり、その最大の臨床的特徴は遺伝性疾患でありながら加齢とともに病変皮膚の一部から相同組換えにより病因変異が消失し自然治癒することである。研究代表者は先行研究にて、Ichthyosis with confettiやロリクリン角皮症での変異消失が常に病因変異よりセントロメア側からテロメアまでの長い相同組換えで起こること、すなわち、Ichthyosis with confettiやロリクリン角皮症では4種類存在する相同組換えの中でbreak-induced replication (BIR)のみによって変異が消失する可能性を見出しており、本研究では、その仮説の検証と遺伝子消失機構の解明を目指す。2020年度はIchthyosis with confettiやロリクリン角皮症においてBIRが生じていることを確認するために、まず変異タンパク質(ケラチン1、ケラチン10、ロリクリン)の安定発現細胞株をTet-Onシステムを用いて作成した。この細胞株を用いて、DNA損傷のマーカーであるγH2AXの免疫染色ならびにWestern blotを実施したが、無刺激・X線照射・エトポシド添加のいずれにおいても変異タンパク質の発現の有無による差異は認めなかった。また、ヒドロキシウレアを投与し、複製ストレスをかけた系でも変異タンパク質の発現の有無による差異は認めなかった。以上、現時点ではBIRである確証はまだ得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tet-Onシステムを用いた、変異タンパク質(ケラチン1、ケラチン10、ロリクリン)の安定発現細胞株(Ichthyosis with confettiやロリクリン角皮症のモデル細胞株)の作成が終わり、この細胞株を用いて、DNA損傷のマーカーであるγH2AXの免疫染色ならびにWestern blotまで終了しているため。また、無刺激・X線照射・エトポシド添加・ヒドロキシウレア添加といった諸条件下でのγH2AXの差異についても評価が終了しており、概ね、計画通りに実験が進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
Tet-Onシステムを用いた、変異タンパク質(ケラチン1、ケラチン10、ロリクリン)の安定発現細胞株を使って、DNA fiber assay(複製速度を測定する方法。複製ストレスにより複製速度は低下)を行い、変異タンパク質が複製ストレス自体を増加させる可能性を検討する。また、複製ストレスを誘導する薬剤(ヒドロキシウレアなど)を細胞株に添加し変異タンパク質の複製ストレス応答への影響を検討することで、複製ストレス下でのBIR頻度を増加させる可能性について評価する。その後、変異タンパク質がBIRを誘発する際の作用点を解明するべく、ChIP-Seq、共免疫沈降法、ツーハイブリッド法を用いて、変異タンパク質が結合する物質の特定を行う。また、RNA-seqを行い、変異タンパク質により誘導される遺伝子発現を網羅的に解析する。これらのデータを統合し、その分子機構を決定する。
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