研究課題
急性膵炎(AP)は致死率が高いが治療法の乏しい急性疾患である。胆道系疾患、アルコール多飲、高中性脂肪血症(HTG)などが危険因子となるが、適切な動物モデルに乏しく、その分子機構は十分解明されていない。我々は、これまで重度HTGの病態生理的マウスとそのレスキューモデルを確立してきた。重度HTGの原因遺伝子であるアポリポ蛋白A-V(apoA-V)の欠損マウスは、通常食では軽度なHTG(約500 mg/dL前後)を示すが、加齢、高炭水化物食、薬剤(LXRアゴニスト)等の環境因子の負荷により、ヒトと同様の環境因子による重度HTG(1,000 mg/dL以上)を来たす。このapoA-V欠損マウスにおける環境因子によるVLDL蓄積は、肝臓の脂質合成を制御する転写因子SREBP-1c欠損によりレスキューできる。本研究課題は、独自に確立してきたこの重度HTGとそのレスキューモデルを活用して、膵炎の主要な原因の一つである重度HTGによる急性膵炎(HTG-AP)のマウスモデルを確立し、膵炎発症の分子機構解明と、新規治療法開発に挑むものである。最終年度までの研究の結果、野生型マウスやapoA-V欠損マウスに、膵臓の腺房細胞を障害する負荷(セルレイン投与)を加えることにより、血中アミラーゼの上昇、膵腫大、膵臓の炎症系遺伝子のmRNA発現亢進を来すなど、急性膵炎が誘発されることを見出し、HTG-APの新たな動物モデルとして有用である可能性が示された。このモデルを用いることにより、どのような栄養負荷(炭水化物の量や質、脂質の量や質など)が膵炎を惹起するのか、SREBP-1c欠損によるapoA-V欠損マウスの高VLDL血症のレスキューは膵炎を軽減できるのか、今後さらに解明して行きたい。予防困難で特効薬の乏しい膵炎の病態解明と創薬を推進する知見を得るべく、研究を継続している。
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