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2020 年度 実施状況報告書

腎臓細胞のエピゲノム記憶を用いた生活習慣病の統合的解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K21596
研究機関東京大学

研究代表者

藤田 敏郎  東京大学, 先端科学技術研究センター, 名誉教授 (10114125)

研究分担者 鮎澤 信宏  東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (50459517)
丸茂 丈史  国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (70265817)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード糖尿病性腎症 / エピジェネティクス / 近位尿細管 / 尿中マーカー
研究実績の概要

高血圧や糖尿病などの生活習慣病には環境因子の影響が体に記憶され発症する。環境因子が臓器に蓄積する分子機構にはエピジェネティクスが深く関与する。本研究では腎臓細胞のDNAメチル化解析によりエピジェネティックな側面から生活習慣病が発症する分子機構を明らかにすることを目的とした。腎尿細管障害は糖尿病患者の腎機能低下の一因となっている。細胞型特異的なDNAメチル化パターンは特定の細胞型の割合を算出するのに用いられてきた。我々は尿中に排出された尿細管剥離細胞を用いて尿細管細胞特異的なDNAメチル化パターンを調べることで、糖尿病患者の尿細管傷害を検出する方法を開発した。方法としては、ヒト腎近位尿細管細胞に特異的なDNAメチル化パターンを、コンパートメント特異的なメチローム解析により同定した。次に糖尿病患者の尿沈渣中の近位尿細管特異的遺伝子座のメチル化レベルを測定し、臨床変数との相関を解析した。その結果 ヒト近位尿細管細胞では、SMTNL2とG6PCが選択的にメチル化されていないというゲノム遺伝子座を同定した。尿沈渣中のSMTNL2とG6PCのメチル化レベルは、傷害により剥離した近位尿細管細胞の割合を反映していると考えられ、互いによく相関していた。また、尿沈渣中のSMTNL2のメチル化レベルは、推定糸球体濾過量の年間減少量と有意に相関した。さらに、既知の危険因子を含むモデルに尿中のSMTNL2のメチル化を加えると推定糸球体濾過率の低下が速い糖尿病患者の識別がより有効にできることが分かった。本研究はエピジェネティックな尿検査により、腎機能の低下が続く糖尿病患者が特定のDNAメチル化標識によって層別化されうることを示しており、近位尿細管細胞の傷害が糖尿病性腎疾患の発症に寄与することを尿中の尿細管剥離細胞で確認できることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

糖尿病性腎症の進展度合いを尿中に剥離した細胞のエピジェネティック解析により知ることができること、すなわち糖尿病性腎症の新たな尿中マーカーを提示し、論文化できたため(BMJ Open Diabetes Res Care. 2020 Sep;8(1):e001501.)。また、糖尿病性腎症症例の腎組織から得られたサンプルを用いた網羅的解析では、腎症の進行と関連するDNAメチル化異常を呈する遺伝子を複数見出し、検証を進めている。

今後の研究の推進方策

糖尿病性腎症における障害形成機序は不明な点が多く、動物モデルを用いて検討を進め、新規治療標的の探索を行う。
これまでの検討で見出した、糖尿病性腎症に生じるDNAメチル化異常のなかには、共通の経路に関わる遺伝子が含まれている。このような経路では、複数の遺伝子にDNAメチル化変化が生じているため、パスウェイ全体が強く調整されていると思われ、メタボリックメモリーの元になっている可能性がある。今後は、このような共通の経路に集中してみられるDNAメチル化異常に焦点を当てて検討を進める。パイロシークエンス法によるDNAメチル化異常の検証を行い、培養細胞および動物モデルを用いて異常のみられる遺伝子への介入実験を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

計画的に使用していたが、予定していた実験用消耗品購入が想定時より遅延し、次年度への繰り越しとなった。次年度同品を購入予定であり、その他に予定している物品購入や使用計画にも今のところ変更はない。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] The Mineralocorticoid Receptor in Salt-Sensitive Hypertension and Renal Injury.2021

    • 著者名/発表者名
      Ayuzawa N, Fujita T.
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol.

      巻: 32 ページ: 279-289

    • DOI

      10.1681/ASN.2020071041.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Kidney and epigenetic mechanisms of salt-sensitive hypertension.2021

    • 著者名/発表者名
      Kawarazaki W, Fujita T.
    • 雑誌名

      Nat Rev Nephrol.

      巻: 17 ページ: 350-363.

    • DOI

      10.1038/s41581-021-00399-2.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Methylation pattern of urinary DNA as a marker of kidney function decline in diabetes2020

    • 著者名/発表者名
      Marumo T, Hoshino J, Kawarazaki W, Nishimoto M, Ayuzawa N, Hirohama D, Yamanouchi M, Ubara Y, Okaneya T, Fujii T, Yuki K, Atsumi Y, Sato A, Arai E, Kanai Y, Shimosawa T, Fujita T.
    • 雑誌名

      BMJ Open Diabetes Res Care .

      巻: 8 ページ: e001501

    • DOI

      10.1136/bmjdrc-2020-001501.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Two Mineralocorticoid Receptor-Mediated Mechanisms of Pendrin Activation in Distal Nephrons2020

    • 著者名/発表者名
      Ayuzawa N, Nishimoto M, Ueda K, Hirohama D, Kawarazaki W, Shimosawa T, Marumo T, Fujita T.
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol.

      巻: 31 ページ: 748-764.

    • DOI

      10.1681/ASN.2019080804.

    • 査読あり
  • [学会発表] 加齢に伴う高血圧発症機序の解明~食塩の関与~2021

    • 著者名/発表者名
      河原崎和歌子
    • 学会等名
      CVMW2020、血管生物シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 糖尿病性腎症に生じたメタボリックメモリー関連遺伝子のDNAメチル化異常.2020

    • 著者名/発表者名
      丸茂丈史、星野純一、山内真之、乳原善文、河原崎和歌子、西本光宏、鮎澤信宏、広浜大五郎、藤田敏郎.
    • 学会等名
      第63回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] アルドステロン過剰時のPendrin制御とα-ケトグルタル酸2020

    • 著者名/発表者名
      鮎澤 信宏、広浜 大五郎、西本 光宏、河原崎 和歌子、丸茂 丈史、藤田 敏郎.
    • 学会等名
      第63回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] ポドサイトRac1-ミネラルコルチコイド受容体(MR)系活性化は糖尿病性腎臓病進展に寄与する.2020

    • 著者名/発表者名
      広浜 大五郎, 西本 光宏, 鮎澤 信宏, 河原崎 和歌子, 大庭 成喜, 丸茂 丈史, 藤田 敏郎.
    • 学会等名
      第63回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] 加齢に伴う食塩感受性高血圧発症における腎血管性機序の検討2020

    • 著者名/発表者名
      河原崎 和歌子, 水野 理介, 西本 光宏, 鮎澤 信宏, 広浜 大五郎, 大庭 成嘉, 丸茂 丈史, 藤田 敏郎.
    • 学会等名
      第63回日本腎臓学会総会
  • [学会発表] 新たな糖尿病性腎臓病モデルの開発とミネラルコルチコイド受容体の関与の解明.2020

    • 著者名/発表者名
      広浜 大五郎, 西本 光宏, 鮎澤 信宏, 河原崎 和歌子, 大庭 成喜, 丸茂 丈史, 藤田 敏郎.
    • 学会等名
      第56回高血圧関連疾患モデル学会
  • [学会発表] アルドステロン過剰におけるアルカローシス依存性のPendrin制御機構の解析.2020

    • 著者名/発表者名
      鮎澤信宏
    • 学会等名
      第15回Vascular Biology Innovationに関する研究助成発表会
  • [学会発表] 加齢に伴う高血圧発症機序の解明~食塩の関与~2020

    • 著者名/発表者名
      河原崎和歌子
    • 学会等名
      第15回Vascular Biology Innovationに関する研究助成発表会
    • 招待講演
  • [備考] アルドステロンと高血圧~腎尿細管ナトリウム輸送体の活性化機構~

    • URL

      https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/report/page_01218.html

  • [備考] 高血圧とエピジェネテイクス~食塩と腎臓の役割~

    • URL

      https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/report/page_00040.html

  • [産業財産権] 腎機能の評価方法および糖尿病患者における腎機能が低下した患者の判別方法2020

    • 発明者名
      丸茂丈史、藤田敏郎
    • 権利者名
      丸茂丈史、藤田敏郎
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2020-150726

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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