研究課題/領域番号 |
20K21598
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
竹内 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451999)
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研究分担者 |
井原 健介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50770210)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 非コード長鎖RNA / TBX5 / SALL4 / NKX2-5 / エピゲノム解析 / RIP解析 |
研究実績の概要 |
2020年度において、研究計画(2)、および(3)の研究推進を行いった。 A:lncRNA変異モデルの心疾患表現型の組織学的と遺伝学的理解:新技術のin uterus CRISPR/Cas法(iGONAD)を用いて多重遺伝子破壊マウスを作出した。多重遺伝子破壊マウスはTbx5単一遺伝子破壊モデルより重度の心奇形を伴っていた。 B:培養系を用いたRNA―タンパク室相互作用実験:RNA-タンパク質免疫沈降法(RIP)を用いたGm5563と心臓転写因子(Tbx5、Gata4、Tbx1、Mef2c)との相互作用を調べた。その結果、Tbx5タンパク質と特異的に結合していることが示された。 C:Tbx5-Gm5563の下流制御因子の一つとして、GPC5を単離した。GPC5はWntシグナルを増強するリガンドの一つである。本年度にはGPC5が幹細胞維持に寄与していることを報告した (Takeuchi, PLOS ONE 2021)。また、GPC5のKOでは心形態異常を伴うことを見出した。 これらの結果は、非コードRNAがTbx5心疾患の重症化に関わること、Wntシグナルを制御していることが強く示唆された。今後は、特異的な下流遺伝子の単離、RNA-タンパク質の相互作用を明らかにし、本研究論文を投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A: lncRNA変異モデルの心疾患表現型の組織学的と遺伝学的理解:新技術のin uterus CRISPR/Cas法(iGONAD)を用いることにより、効率よく短期間(F0で解析可能)で多重遺伝子破壊マウスを作出した。この手法を用いて以下の研究を実施した。 Gm5563 KOマウス、Tbx5 KOマウス、Gm5563+/-/Tbx5+/- ヘテロマウス、Gm5563+/-/Tbx5+/- KOマウスの作成→ Gm5563単一遺伝子破壊マウスにおいてTbx5の発現は不変であったがNppa、Gja5(Tbx5の直接標的遺伝子)の発現は顕著に抑制されていた(Hori, BMC genomics 2018)。興味深いことに、Gm5563+/-/Tbx5+/-マウスはTbx5-/-マウスと同程度の重度奇形を生じていた。これまでの結果からGm5563 KOとTbx5 KOとでは遺伝学的な相関性が予想される。 B: 培養系を用いたRNA―タンパク室相互作用実験 RNA-タンパク質免疫沈降法(RIP)を用いたGm5563と心臓転写因子(Tbx5, Gata4、Tbx1、Mef2c)との相互作用の理解→Gm5563、Tbx5、Gata4、Tbx1、Mef2c 強制発現レトロウイルスを作成しHela細胞に48時間感染させた細胞抽出液を用いて各々のタンパク質に対する抗体で免疫沈降をおこなった。その後Gm5563特異的なprimerでPCRを行い、相互作用の可否を評価した(以下:RIP-qPCR)。RIP-qPCRの結果、Gm5563がTbx5特異的に共役している萌芽的結果を得た。興味深いことに、Tbx5-Gata4-Mef2cを強制発現させた場合のみ、Gata4およびMef2cとGm5563は相互作用できることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
A: 心臓特異的非コードRNAの遺伝学的理解:Gm5563 KOとTbx5 KOとの比較し下流制御遺伝子の同定 → mRNAシーケンスによりGm5563変異によって発現変化する心臓遺伝子群の特徴とTbx5の下流制御遺伝子との相関性を解析する。この情報は研究研究計画Cでの核内転写実験において重要な意味を持つ。 B: Tbx5-Sall4―Gm5563の下流標的因子としてのWntシグナル増強機構の解明。Wntシグナル増強するリガンドとしてGPC5が知られている。GPC5はTbx5-Sall4によって制御されていることを突き止めた。さらに、Gm5563が発現を補助している。すでに申請者はGPC5が幹細胞維持に寄与していることを報告している(Takeuchi, PLOS ONE 2021)。本研究ではさらに下流制御機構において論文作成中であり、本年内に投稿する。 C: biotin標識-Gm5563およびbiotin標識-Gm42017強制発現系を用いて、相互作用するタンパク質を単離する。 D: Gm5563 KOマウスの心疾患発症における生理学的解析:Gm5563 KO、Gm42017 KO、Tbx5+/-マウスの心機能解析 →心エコー、および心電図解析を行い、Gm5563 KO、Gm42017 KOマウスの心機能をTbx5+/-マウスと比較する。Tbx5+/-マウスでの心機能解析実績(Takeuchi, Nat. Commun. 2011)をもとに各KOマウスの生体機能を調査し研究計画Aの遺伝子解析と比較し、標的遺伝子の同定、および疾患の発症機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦のために国内外学会参加できず、そのための旅費代の差が生じた。また、論文作成に関わる校閲費・投稿費用は2022年度に必要である。
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