研究課題
特発性肺線維症(IPF)の「線維芽細胞巣」は疾患活動性と高い相関性を示すが通常胸部computed tomography (CT)では描出できないため、IPFの治療機会を逃すとともに治療反応性を予測できない。CTで検出しうる金ナノ粒子を標識したIPF特異的分子抗体を用いてCTで検出することにより、免疫病理学的診断能を付与する線維芽細胞巣のCT画像診断アルゴリズムを確立することを本研究課題の目的としている。我々は特発性肺線維症患者10例の肺組織を用いて線維芽細胞特異的分子としてmeflinの発現をIn situ hybridization(ISH)法によって局在を評価した。ISH法ではmeflin mRNAは線維芽細胞巣に限局して発現していることを同定し得た。一方、コマーシャルベースのmeflin特異的抗体を用いた免疫染色では、正常肺におけるmeflin発現の特異性を同定し得なかった。本研究の実現に抗体の調整が必要であることを把握できた。抗体に標識された金ナノ粒子の検出を行う適正化のために、肺線維症特異的分子に対する抗体を用いて免疫染色を行い、金ナノ粒子の検出を評価した。暗視野顕微鏡を用いて肺線維症特異的分子に対する抗体に標識された金ナノ粒子を評価した。前回、肺組織内平滑筋に発現し筋線維芽細胞特異的分子であるα-smooth muscle actin(α-SMA)に対する一次抗体に金ナノ粒子標識二次抗体を用いて免疫染色を行い、暗視野顕微鏡で金ナノ粒子発現を観察し、現在マウス動物実験において、金ナノ粒子標識抗体を生体内静脈投与し、肺線維症特異的分子に結合した抗体の金ナノ粒子を検出する病理学的評価を行うとともに、CTでの検出条件の設定を進めている。金ナノ粒子を結合した抗体を検出する実験系の確立に時間を要しているが概ね順調と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
・抗体に標識された金ナノ粒子の検出を行う適正化のために、肺線維症特異的分子に対する抗体を用いて免疫染色を行い、金ナノ粒子の検出を評価した。暗視野顕微鏡を用いて肺線維症特異的分子に対する抗体に標識された金ナノ粒子を評価した.前回,肺組織内平滑筋に発現し筋線維芽細胞特異的分子であるα-smooth muscle actin(α-SMA)に対する一次抗体に金ナノ粒子標識二次抗体を用いて免疫染色を行い、暗視野顕微鏡で金ナノ粒子発現を観察したところ検出可能であった。より精度をあげるために、細胞表面分子である血管内皮細胞特異的分子CD31を標的とする実験を追加して行った。濃度依存的に血管内皮細胞株上で、金ナノ粒子に伴う発現を確認することができた。・今回正常野生型マウスに対して、肺血管内皮細胞上に発現するCD31に対する一次抗体に金ナノ粒子標識して、静脈投与を行い、肺組織の評価とマイクロCT撮影評価の実験を開始した。・新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響により、移動制限と物流の停滞が再三起こったため、計画していた実験の実施が困難であったが、マウス動物実験において金ナノ粒子標識抗体を生体内静脈投与し、肺線維症特異的分子に結合した抗体の金ナノ粒子を検出する病理学的評価を行うとともに、CTでの検出条件の設定を進めている。よって、当初計画における研究課題1と研究課題2のデータ収集をしているが、In Vivoでの評価を調整中である。
・マウス肺線維症モデルにおける金ナノ粒子を同定する研究課題の達成を目指して、ヒト肺線維症検体を用いた金ナノ粒子の同定を同時に達成する。その一方で、暗視野顕微鏡とマイクロCTでの金ナノ粒子の検出の感度の相違が想定されるため、最適化した金ナノ粒子の標識が重要な課題と考えている。・In vivo系で金ナノ粒子の検出は、標的蛋白の発現量と相関すると考えられる。金ナノ粒子をマイクロCTで検出して免疫病理学的診断能を付与することは、対象疾患に疾患特異的病理所見・疾患特異的抗原・その特異的抗体がある場合に応用できるものであるので、まずマイクロCTでの検出が可能な発現量が十分ある分子を標的として検出条件を評価する必要があると考える。・「線維芽細胞巣」の同定は本研究において重要な課題目標であるが、「線維芽細胞巣」特異的抗体が樹立・確立できない場合やマイクロCTでの検出感度以下の発現であった場合には、肺線維症特異的分子に対する金ナノ粒子標識抗体を用いて、マイクロCTでの免疫病理学的診断能付与の確立を先行させる。組織特異的な金ナノ粒子標識抗体を用いた造影マイクロCTスキャンによって肺組織を描出することで、本研究課題がマイクロCTに免疫病理学的診断能を付与するという目標を達成できると考える。
R3年度は新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響により、移動制限と物流の停滞が再三起こったため、研究全体における進捗は計画していた実験の一部実施が困難であった。R3年度に計画していた実験をR4年に継続することで研究の目的を実行をできるように推進している。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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