研究課題
昨年度に引き続いて本研究計画における動物実験系での検討を主体に進めた。内容としては、1)高血圧・腎臓病モデル動物におけるATRAP発現調節の解析、2)皮膚組織局所でのATRAP発現調節による心血管腎臓病制御の検討、に関する解析を遂行した。1)高血圧・腎臓病モデル動物におけるATRAP発現調節の解析では、自然発症高血圧ラット(SHR)、5/6腎臓摘出・腎障害薬剤負荷による慢性腎臓病モデルラットにおける皮膚・皮下組織局所ATRAP発現(mRNA・蛋白)と血圧(テレメトリ法による直接測定)・腎機能(クレアチニン クリアランス法による測定)との関連性の検討を進めている。また、2)皮膚・皮下組織局所でのATRAP発現調節による心血管腎臓病制御の検討(2021-22年度)では、作製済のATRAP-floxedマウスを利用して皮膚ケラチノサイト特異的ATRAP低発現マウス(K14-Cre+/ATRAPfl/fl マウス)及び皮膚ケラチノサイト特異的ATRAP高発現トランスジェニックマウス(K14-ATRAP TGマウス)を作製し、皮膚組織のATRAP発現調節によるアンジオテンシンII刺激による高血圧と心血管障害、及び5/6腎臓摘出・腎障害物質負荷による慢性腎臓病の制御が実現できるかどうかについて検討を進めている。また、臨床的検討として、3)ヒト皮膚組織でのATRAP発現と高血圧、心血管障害、及び慢性腎臓病との関連性の検討のための準備も進めている。本研究内容については、横断的解析臨床研究(初回承認番号: B190500008;UMIN ID: 000035688)として、すでに横浜市立大学倫理審査委員会から承認を得て検体収集を進めている。本研究項目では、20歳以上の手術適応の直腸癌患者を対象とし、ストマ造設時に廃棄する腹部皮膚組織を収集して研究を行うものであり順調に検体数が増加している。現在までの結果については2022年度6月開催の日本腎臓学会総会のシンポジウムにおいても発表予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は、本学附属病院は新型コロナ感染症(COVID-19)パンデミックに対する医療体制の神奈川モデルにおいて高度医療機関としてかなりのエフォートを割いて対応していた。神奈川県におけるCOVID-19全般への対応として、地域との連携・協力のもと、医療崩壊を防ぐための現場起点の医療体制「神奈川モデル・ハイブリッド版」の体制整備が進められている。その中で、研究代表者は、透析中COVID-19患者への対応向上のために、神奈川県健康医療局 保健医療部がん・疾病対策課へ精力的に協力・連携し、重症化の高リスクとされる透析中COVID-19患者の透析医療機関・クリニック間での入院調整を行うための病床利用状況把握システム(透析版KINTONE)を2020年6月に立ち上げて運用継続している。しかしながら2021年度は、COVID-19感染状況がやや落ち着き、重症化の抑制も見られていたために、研究に注力することが可能となり、動物実験系での検討や臨床的検討も順調に進行しており、学会総会でのシンポジウム発表も予定されている。
神奈川県におけるCOVID-19全般への対応として、地域との連携・協力のもと、医療崩壊を防ぐための現場起点の医療体制「神奈川モデル・ハイブリッド版」における高度医療機関として、早くも第4波に見舞われている状況では、今後も当面の間は、神奈川県におけるCOVID-19全般への対応として、地域との連携・協力のもと、医療崩壊を防ぐための現場起点の医療体制「神奈川モデル・ハイブリッド版」への協力業務にも鋭意取り組まざるを得ない。一方、今求められている健康長寿のさらなる向上にとっての課題は、高血圧・脳心血管病・腎臓病の克服である。これらの3つの病態は互いに密接に連関し共通の病態基盤を有しており、一体的に“心血管腎臓病(病態連関病)”として捉えることができる。共通の病態基盤における主要な循環調節系がレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)であり、RAA系の活性制御は“心血管腎臓病(病態連関病)”の克服のために重要である。本研究では、外的環境に対する防御機能を担う皮膚組織について、「腎組織と共通の構造上の特徴を有し、RAA系構成要素遺伝子の発現が認められる」こと、「心血管腎臓病(病態連関病)の惹起物質(アンジオテンシンII)に対する受容体(AT1受容体)への新規結合蛋白ATRAPの発現が認められる」ことに着目して進めるものであり、上記コロナ対応と並行しつつも、研究室の研究体制も活用して本研究の推進に向けてなお一層精力的に取り組みたい。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (3件)
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