研究課題/領域番号 |
20K21607
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中本 伸宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (40383749)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 急性肝不全 / 細胞療法 / 形質細胞様樹状細胞 |
研究実績の概要 |
申請者は急性肝不全患者の肝臓および血液中の免疫細胞の解析を網羅的に行い、その結果樹状細胞の一種である形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cell; pDC)が顕著に減少し、本細胞の移植によりマウス急性肝不全の病態を改善することを見出した(JCI 2019)。本申請研究において、pDC を肝炎急性期の傷害肝により効率的にデリバリーさせる分子メカニズムを明らかにし、急性肝不全に対する自己骨髄細胞を用いた臨床応用への橋渡しを行う。 1. 急性肝不全患者臨床サンプルを用いた検討 健常人21 例、急性肝炎 (Autoimmune hepaitis; AIH)患者15 例を対象としたフローサイトメトリーを用いた免疫細胞の解析の結果、急性AIH患者末梢血中のCD123+BDCA-2+ pDC の割合は健常人と比較して有意に減少していた(健常群 0.55% vs. 急性 AIH 0.11%)。さらに、AIH を成因とする急性肝不全症例の移植摘出肝を用いた免疫組織染色の結果、門脈域を中心に認められるpDC の数は AIH 患者において健常群と比較して有意に減少しており、末梢血と同様の結果であった。 2. 急性肝障害モデルマウスを用いた pDC の臓器特異的遊走機序 Concanavalin A 投与による急性肝障害マウスのpDC の数は末梢血、肝臓いずれにおいても減少し、pDC が 特異的に除去された Siglec-H-DTR マウスにおいて肝障害の増悪が認められた。一方、治療応用を想定し肝炎誘発後に Flt-3L 添加骨髄細胞由来 pDC を経静脈的に同マウスに投与すると肝障害の軽減が認められた。さらに,小腸ホーミングレセプターとして知られるCCR9 を欠損させた pDC を用いると、pDC の肝臓への集積効率がより高まり、肝障害の軽減作用が増強された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトサンプルを用いた検討、モデルマウスを用いた検討いずれも順調に研究を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに今後下記の点を明らかにする必要がある。 1.ヒトpDCの抑制性機能の検証、マウス同様の機能を有するか 2.ヒトpDCのin vitro増殖能の検討、細胞移植に用いる細胞数を確保することが可能か 3.自己pDC投与による安全性の検証
本研究において、特に上記1,2を明らかにし臨床応用への橋渡しを行う。特に2に関しては、 60Kgの体重の場合、1回の骨髄穿刺で5億個程度の細胞数を確保する必要がある。臨床応用に向けてより効率的なデリバリーを達成するために、pDCが肝臓に臓器特異的に遊走する根幹的機序の解明とその成果に基づいた手法の修正が求められる。検討の結果、自己骨髄細胞を用いた方法では肝障害の回復に有効な細胞数を確保できないと判断した場合には、iPS細胞などによる大量培養技術を用いたAllotransplantationへの方向転換を検討する必要がある。
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