申請者は急性肝不全患者の肝臓および血液中の免疫細胞の解析を網羅的に行い、その結果樹状細胞の一種である形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cell; pDC)が顕著に減少し、本細胞の移植によりマウス急性肝不全の病態を改善することを見出した(JCI 2019)。本申請研究において、pDC を肝炎急性期の傷害肝により効率的にデリバリーさせる分子メカニズムを明らかにし、急性肝不全に対する自己骨髄細胞を用いた臨床応用への橋渡しを行う。 小腸に多く存在するpDCの遊走にCCR9-CCL25 axisが関与することが知られているため、CCR9欠損マウスを用いて各臓器におけるpDCの存在を検討した。その結果、骨髄においては野生型マウスとCCR9欠損マウス間でpDCの数に差はなく、予想どおり小腸においてCCR9欠損マウスにおいてpDCは有意に少なかった。興味深いことに肝臓においては定常状態、ConA投与による肝障害惹起時いずれにおいても抑制性pDCの数はCCR9欠損マウスで増加しており、肝障害の程度も有意に軽減していた。野生型、およびCCR9欠損マウス肝臓pDCを分離しRNA-seq解析により遺伝子発現を検討した結果、両郡において有意な差は認められなかった。また、CD4T細胞との共培養の結果、T細胞の分化抑制能においても両者に歳は認められなかった。一方、マウスにConA急性肝障害惹起後、細胞療法として野生型マウス、またはCCR9欠損マウス骨髄由来pDCを経静脈的に移入した結果、CCR9欠損マウス由来pDCは有意に障害肝臓への集積能が高く、その結果肝障害の程度を有意に抑制することが明らかとなった。今後、ヒト病態での検証を行い、CCR9欠損pDCの分離、分化方法を確立し、将来的な臨床応用を目指す。
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