研究課題
前年度までに明らかになった、同種造血幹細胞移植後のアロ免疫応答である移植片対宿主病GVHDにおける胆管上皮幹細胞傷害のメカニズムを検討した。ドナー由来T細胞の肝臓への浸潤は移植後2週目にはすでにピークに達した。一方、ドナー由来マクロファージは移植後3週目から肝臓への浸潤がみられはじめ、移植後4週後にはピークに達し、それ以降は減じていった。移植後の肝臓より分離作成した胆管上皮オーガノイドは移植後4週目には肝臓内に激減しており、胆管上皮幹細胞傷害におけるマクロファージの関与が考えられた。肝臓において移植後28日目にtransforming growth factor (TGF)-betaの発現亢進がみられたため、その産生細胞の同定を試みた。その結果、肝臓に浸潤した活性化マクロファージでTGF-betaの発現が有意に亢進していたが、Kupffer細胞では発現亢進は見られなかった。In vitroのオーガノイド培養系においてTGF-betaの添加によって胆管上皮オーガノイドの形成能は有意に抑制された。そこでTGF-beta阻害薬であるSB-431542をTGF-beta存在下の胆管上皮オーガノイド培養系に添加したところ、TGF-betaによるオーガノイド形成抑制が解除された。次にSB-431542を移植後14日目からマウスに連日腹腔内投与したところ、肝臓から分離したオーガノイド形成能が有意に改善した。以上の結果からドナーT細胞の肝浸潤に引き続く、ドナーマクロファージの肝浸潤に伴って産生されるTGF-betaが、同種造血幹細胞移植後のGVHDにおける胆管上皮幹細胞傷害のメカニズムであると結論付けた。
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