コンフォメーション変化による抗体産生回避機構を凌駕する次世代型組換えワクチン創成

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K21614
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 野阪 哲哉 三重大学, 医学系研究科, 教授 (30218309)
• 研究期間 (年度): 2020-07-30 – 2023-03-31
• キーワード: 遺伝子組換えワクチン / RSウイルス / プレフュージョン型 / 中和抗体 / hPIV2 / SARS-CoV-2 / 新型コロナウイルス

研究実績の概要

R2年度はBC-PIV/RSV-F-DS-Cav1というpre-fusion安定化Ｆ蛋白発現ワクチンを用いた解析により、我々の仮説をRSウイルスで実証したが、R3年度はコロナ禍が世界的に長期化・深刻化したため、我々もSARS-CoV-2ワクチンの開発に全力を注いだ。具体的にはSpike蛋白をpre-fusion安定化する2P変異体（K986P/V987P）を発現するBC-PIV/S-2PMを用いた解析を行った。
S-2PM変異体はpre-fusionのままでpost-fuionに変換しないので、細胞に膜融合を生じさせず、細胞毒性がほとんどないばかりか、動物実験において予想通り、SARS-CoV-2に対する高い中和抗体価を誘導した。特にBC-PIV/S-2PMを経鼻投与したハムスターにおいては、肺と鼻においてほぼ完璧にSARS-CoV-2の感染を阻止し、長期（8か月）におけるprime-boost効果も確認できたので、2種類のウイルスで我々の仮説が実証されたと言える。

現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

RSウイルス、新型コロナウイルス（SARS-CoV-2）という2種類のウイルスにおいて我々の仮説が実証され、新規ワクチン開発も順調に進行しているから。

今後の研究の推進方策

RSウイルスに関しては遺伝子不活化（即ち、蛋白質型）組換えワクチン、SARS-CoV-2に関しては生ウイルス（即ち、遺伝子/蛋白質型）組換えワクチンを用いた解析を行ってきた。R4年度はRSワクチンも生ウイルス組換えワクチンを用いた解析による有効性の確認を行い、コロナワクチンに関しては、各種変異株対応ワクチンを各々生成し、当該変異株に対してもpre-fusion型が良く効くのか、確認する予定である。

備考

三重大学大学院医学系研究科 感染症制御医学・分子遺伝学分野 https://www.medic.mie-u.ac.jp/microbiol/
三重大学卓越型研究施設 次世代型VLPワクチン研究開発センター https://www.mie-u.ac.jp/research/vlp-vakzin/

研究成果

• [雑誌論文] Inhibition of lung microbiota-derived proapoptotic peptides ameliorates acute exacerbation of pulmonary fibrosis. (2022)
  • 著者名/発表者名: D'Alessandro-Gabazza CN, Yasuma T, Kobayashi T, Toda M, Abdel-Hamid AM, Fujimoto H, Hataji O, Nakahara H, Takeshita A, Nishihama K, Okano T, Saiki H, Okano Y, Tomaru A, D'Alessandro VF, Shiraishi M, Mizoguchi A, Ono R, Ohtsuka J, Fukumura M, Nosaka T, et al. and Gabazza EC.
  • 雑誌名: Nat Commun 巻: 13 ページ: 1558
  • DOI: 10.1038/s41467-022-29064-3
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Non-propagative human parainfluenza virus type 2 nasal vaccine robustly protects the upper and lower airways against SARS-CoV-2. (2021)
  • 著者名/発表者名: Ohtsuka J, Imai M, Fukumura M, Maeda M, Eguchi A, Ono R, Maemura T, Ito M, Yamayoshi S, Kataoka Y, Kawaoka Y, Nosaka T.
  • 雑誌名: iScience 巻: 24 ページ: 103379
  • DOI: 10.1016/j.isci.2021.103379
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] ワクチン開発と今後の課題 (2021)
  • 著者名/発表者名: 野阪哲哉、福村正之、大塚順平
  • 学会等名: 第31回日本産業衛生学会全国協議会
  • 招待講演
• [産業財産権] SARS-CoV-2 vaccine (2021)
  • 発明者名: 野阪、小埜、河岡、今井、山吉、福村、大塚
  • 権利者名: 三重大学、東京大学、バイオコモ株式会社
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: PCT/ＪP2021/26368
  • 外国