RSウイルスに関しては、BC-PIV/RSV-F-DS-Cav1の生ウイルス組換えワクチンをハムスターに経鼻投与し、中和抗体を誘導するか否か、解析した。具体的には、当該ワクチンとコントロールベクターを各々1億個、4週間間隔で2回経鼻投与し、2回目の投与から2週間後、採血し、血清中の抗体価、中和抗体価を各々、ELISA、GFP発現RSウイルスを用いたプラークアッセイにより解析した(札幌医科大学 微生物学教室 小笠原徳子博士との共同研究)。その結果、ワクチン投与群では10万倍希釈血清でもRSウイルスF蛋白に対する抗体価と、個体によっては800倍希釈血清でもRSウイルスの中和活性が得られた。さらに、ワクチン投与ハムスターにRSウイルスを感染させるチャレンジ試験も行ったが、同実験はRSウイルスのハムスターへの感染効率が悪く、コントロールベクター投与群でも肺炎を起こさず、RSウイルスも検出されなかったことから再実験の必要性が生じた。対策としては、RSウイルスを肺まで確実に到達させる特殊なデバイスを用いることで対処する予定である。いずれにせよ、中和抗体が誘導できていることは間違いないので、感染実験の手技の問題である。一方、COVID-19経鼻ワクチンについては、SARS-CoV-2 アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、カッパ、ラムダ、オミクロン株(BA.1、BA.2)の各々のスパイク蛋白に対するワクチンを作製し、ハムスターに投与後、変異株対応中和抗体アッセイキット(GeneScript社 cPassキット)を用いて血清中の変異株特異的中和活性を確認できた。また、武漢型スパイク蛋白に対するワクチンを用いた実験により、最低5000個のウイルス(ワクチン)を経鼻投与すれば十分な中和抗体価が得られることがわかり、prefusion型抗原を用いれば効率よく中和抗体が誘導されることが確認された。
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