研究課題
これまでの基礎研究データの蓄積によりアレルギー疾患を抑制する因子(サイトカイン、転写因子、および代謝物)について、疾患をコントロールするいくつかの有力な候補因子が挙げられている。しかしながら、生理的重要性や治療効果の証明については遺伝子改変マウスに強く依存しており、マウス作製含め検証自体に多くの時間を要することもあるため、臨床応用への距離は未だ非常に遠くなっている。本研究ではアデノ随伴ウイルスを用いた、in vivoで効率良く特定の遺伝子を発現誘導することのできるCRISPR/Cas9 TGA(Target Gene Activation)システムにより、喘息やアトピー性皮膚炎をはじめとしたアレルギー疾患の新規遺伝子治療法を開発し、基礎と臨床の距離を縮めること目標とする。具体的には、これまでのわれわれの免疫アレルギー研究で培ってきたエビデンスを基に、IL-10やIL-27などの抑制性液性サイトカインについては環境細胞を中心に誘導、またEomes、Ezh2、およびDusp10などの内因性制御因子についてはリンパ球に発現させ、アレルギーの場、およびエフェクター細胞の両方をコントロール・沈静化を図る革新的なアレルギー疾患治療の開発を行う。本年度はCOVID-19の影響により昨年度に計画した研究を推進することができなかった。
4: 遅れている
COVID-19の影響もあり、所属機関の方針、および協力機関の都合によって、成果とりまとめに不可欠な実験実施が困難であったため。
次年度以降は以下に示す研究項目を推進する。1. アデノ随伴ウイルスを用いたマウス個体レベルでのCRISPR/Cas9 TGAシステム検討遺伝子誘導活性を示すsgRNAについて、アデノ随伴ウイルス(AAV)に発現させ、濃縮、回収後、マウスへの感染を行う。AAVについては、臓器、および細胞種によって感染のしやすさが大きく異なるセロタイプがある。基本的には、上皮細胞や内皮細胞などの環境細胞についてはセロタイプ9もしくはDJが効率良く感染することからIL-10やIL-27などのサイトカインについてはこれらのセロタイプを中心に検討を行う。さらに最近の研究から、T細胞についてはAAV6が良く感染することが報告されているため、AAV6についても同様に検討を行い、感染後の各種細胞集団についてセルソーターを用いて回収し、目的の遺伝子が高発現で認められるか定量的PCRを用いて解析する。発現誘導が認められたサンプルについては感染後どの期間まで持続的に発現し続けるか、臓器ごと(特に肺と皮膚については重点的)に時系列を追って確認作業を行う。2. CRISPR/Cas9 TGAシステムによる喘息およびアトピー性皮膚炎の制御発現誘導が認められたsgRNAおよびAAVセロタイプを用いて喘息・アトピー性皮膚炎への影響について検討を行う。喘息については、OVAおよびIL-33を複合使用することで、非常に強い抗原特異的な喘息症状を誘導することができる。また、アトピー性皮膚炎については活性ビタミンD3誘導体MC903を用いて顕著なアトピー症状を示す病態を誘導することができる。両アレルギーマウスモデルについては当研究施設において共に確立済みである。喘息病態の指標については、炎症細胞浸潤・病理像解析・サイトカイン産生プロファイル・粘液産生および病態スコアを用いて評価を行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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