まず、複数のMDSモデルマウスから間葉系幹細胞をFACSソートして、正常骨髄由来の間葉系幹細胞と比較して、単一細胞レベルでの発現データを元にUMAP法によるクラスタリング解析を行った。興味深いことに、間葉系幹細胞は予想以上に不均一性であり、より未分化な集団からosteoblast、chondrocyte、pericyteなどに分化傾向を有する細胞まで様々なクラスターに分類されることが明らかとなった。クラスター内でも正常骨髄とMDSでは、大きく分布が異なっていた。例えば、osteolineage programはより正常間葉系幹細胞にエンリッチしており、MDSにおいて間葉系幹細胞の骨芽細胞系列への分化が抑制されていた。さらに、最も未分化な幹細胞分画においても、MDS由来の間葉系幹細胞ではGrem1、LeprやVcam1、ニッチ因子であるCxcl12、Kitlが顕著に低下しており、間葉系幹細胞の転写プログラムが脱制御されていた。この間葉系幹細胞の分化抑制について、MDS細胞から分泌されるエキソソームが主因子となるため、エキソソームmiRNAに着眼をして網羅的解析を行った。マウスMDS細胞由来のエキソソームに含有されるmiRNAは骨芽細胞への分化、間葉系幹細胞の生存や増殖に関連した遺伝子群を標的とすることが示された。この中のmiRNA-128-3pを導入したMSCではALP活性が低下し、さらに共培養の実験系で正常造血幹細胞のサポート能が低下した。さらに、38例のMDSヒト検体を用いたmiRNA解析では、正常対照群とは異なるクラスターに分類され、MDS細胞由来のエキソソームの特徴が裏付けられる結果となった。さらに、二つのマウスモデルとヒト検体のmiRNA標的パスウェイは半数程度重複しており、種を超えたMDS細胞由来のエキソソーム・miRNAによる間葉系幹細胞の制御機構が示唆された。
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