研究課題/領域番号 |
20K21624
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
後藤 昌史 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50400453)
|
研究分担者 |
稲垣 明子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20360224)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 免疫抑制剤 / 膵島移植 / KRP-203 / 耐糖能 / 新生血管 |
研究実績の概要 |
移植医療の深刻な課題として生涯に渡る免疫抑制剤の服用があげられる。長期に及ぶ免疫抑制剤の服用は患者に様々な副作用をもたらすが、それだけでなくカルシニューリン阻害剤をベースとする現行の世界標準である免疫抑制剤は移植グラフトにも糖尿病や血管障害など多くの悪影響を及ぼすことが明らかとなっている。こうした背景により、カルシニューリン阻害剤に依存しない新規免疫抑制剤の開発が求められている。申請者らはカルシニューリン阻害剤と異なる作用機序を有するKRP-203に着目し、この新規物質が"糖尿病を引き起こさない"、"血管障害を生じない"、"カルシニューリン阻害剤と同等以上に拒絶反応を制御できる"ことを本研究にて実証し、体やグラフトに優しい免疫抑制剤として確立することを目指す。本年度は、昨年度に引き続きKRP-203の新生血管構築阻害に関する検証を目的とし、これまでに我々がその有用性を報告してきたdorsal skinfold chamberから成る高感度イメージングシステムにて、移植膵島グラフト周囲の新生血管体積量の評価を実施した。その結果、薬剤の作用機序から予想した通り、KRP-203は膵島グラフトの新生血管構築阻害を引き起こさないことが明らかとなった。さらに本年度はhigh responderであるB6マウスをレシピエントとした同種同系膵島移植実験を実施し、KRP-203とラパマイシンを組み合わせることにより、同種免疫拒絶反応におけるT細胞およびB細胞のグラフト浸潤を効果的に制御することが可能であることが明らかとなり、本研究の最大の目的であったカルシニューリン阻害剤に依存しない臨床応用可能な免疫制御プロトコールを樹立することができた。本研究における主要目的を達成することができたため、まずはここまでの成果を分野の主要journalであるTransplantationへ報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、当初の研究計画通りKRP-203の新生血管構築阻害に関する検証を実施し、期待通りKRP-203が新生血管構築阻害を引き起こさない免疫抑制剤であることを実証することができた。さらに、その後同種同系膵島移植実験を実施し、KRP-203とラパマイシンを組み合わせることにより、カルシニューリン阻害剤と同等以上にグラフトへのリンパ球浸潤を制御できることを実証し、これら一連の成果は分野における意義が高い成果であるため、とり急ぎ分野の主要journalであるTransplantationへ報告を済ませた。成果の創出、論文報告のいずれも順調に進めることができ、当初の想定以上のペースであったため、本年度の研究計画は当初以上に極めて進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を推進する事により、KRP-203が新生血管構築阻害を引き起こさない臨床応用上、極めて有用な免疫抑制剤であることが判明したため、2022年度は当初の計画通り、膵島の門脈移植後に惹起される激しい原始免疫反応に対しKRP-203がどのような影響を及ぼすか検証していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に従い、2022年度分の検証項目として“膵島の門脈移植後に惹起される激しい原始免疫反応に対しKRP-203がどのような影響を及ぼすか”を探求するための実験動物、糖尿病モデル作製薬剤、膵島分離試薬、タンパク解析kit、免疫組織化学染色解析用の抗体一式などに経費が必要である。
|