研究課題
移植医療の深刻な課題として生涯に渡る免疫抑制剤の服用があげられる。カルシニューリン阻害剤をベースとする現行の世界標準である免疫抑制剤は移植グラフトにも糖尿病や血管障害など多くの悪影響を及ぼすことが明らかとなっている。申請者らはカルシニューリン阻害剤と異なる作用機序を有するKRP-203に着目し、この新規物質が"糖尿病を引き起こさない"、"血管障害を生じない"、"カルシニューリン阻害剤と同等以上に拒絶反応を制御できる"ことを本研究にて実証し、体やグラフトに優しい免疫抑制剤として確立することを目指す。本年度は、昨年度に引き続き、まずKRP-203の同種免疫拒絶反応制御に必要な最低投与量と、レシピエント体内におけるKRP-203の薬物動態について検証を実施した。その結果、投与量としては3.0 mg/kg/dayが必要であり、体内における半減期が約30時間であるため、1日1回の投与を1週間程度継続すればCmaxとトラフ値が安定化することが明らかとなった。これらの薬学的基礎検証結果に基づき、KRP-203長期投与群(膵島移植1週間前よりKRP-203を投与)、KRP-203短期投与群(膵島移植1週間前よりKRP-203の溶媒である0.5% Methylcelluloseを、1日前よりKRP-203を投与)、対照群(膵島移植1週間前より0.5% Methylcelluloseを投与)を設定し、臨床膵島移植における移植部位である門脈内移植モデルでKRP-203が膵島グラフトへ及ぼす毒性の有無、および原始免疫反応への影響を検討中である。ここまでの検討により、腸肝循環の影響で代謝された薬剤濃度が数倍高くなるとされている門脈内においても、KRP-203は膵島グラフトへ毒性を示さず、2020年度および2021年度に本研究で実証してきたin vitroの解析結果を裏打ちすることができた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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