研究課題/領域番号 |
20K21626
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野澤 宏彰 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80529173)
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研究分担者 |
石原 聡一郎 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00376443)
川合 一茂 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80571942)
園田 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80770205)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 神経侵襲 / 大腸癌 / 閉塞 |
研究実績の概要 |
神経侵襲(Pn)は種々の固形癌における予後因子である。閉塞性大腸癌に対する減圧目的のステント留置によりPnが増加することが報告され、さらに閉塞性大腸癌ではステントを留置せずともPnが増加することを我々は見出している。世界的なCOVID-19感染と関東における2度の緊急事態宣言の対象地域となったため、著しく研究活動が制限された今年度は、臨床検体を用いた病理学的研究を進めることとし、大腸癌の口側と肛門側に注目してメカニカルストレスとPnの関係を解析した。本学附属病院大腸肛門外科で2017年1月-2020年6月の間に施行されたpT3/T4大腸癌切除症例で通常診療としての病理診断でPn陽性と診断された181例を対象として、腫瘍の腸管軸方向での切片の口側、肛門側について2名が臨床情報なしで再度Pnを診断した。非閉塞 症例127例、閉塞症例(ステントなし)127例、ステント留置症例15例で比較した。口側切片、肛門側切片でのPn陽性率は、非閉塞例で50例(39%)、32例(25%)、閉塞例で22例(56%)、13例(33%)、ステント例で10例(67%)、11例(73%)であった。閉塞例で腫瘍口側でのみPn陽性率が上昇し、非閉塞例との比較でPn陽性率に有意差を認めた(p=0.049)。また閉塞例では口側切片のPn陽性率は肛門側と比較し有意に高かったが(p=0.04)、ステント留置例では肛門側のPn陽性率も上昇したため口側のPn陽性率との差はなくなった(p=0.69)。これらからメカニカルストレスが局所のPnの出現に関与していると考えられた。次年度以降は、さらに分子メカニズムについて細胞実験などの結果を進めて、包括的なPn出現のメカニズムの解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染の蔓延に伴い、研究施設のロックダウンが年度初めに生じたため、臨床検体での病理学的検討から行うこととした。その進捗については順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、閉塞性大腸癌に加わる内腔への圧力という臨床での事象が、細胞における進展刺激と等価であるという仮定のもとに、in vitro実験によって神経侵襲を規定するmediatorが癌細胞が発現しうるかを検討する。 mediatorやそのreceptorは複数の候補があるが、細胞実験により候補を絞り込み、臨床検体(閉塞性大腸癌やステント留置症例)での発現をin situ hybridizationや免疫組織染色法などで検討することとする。 また細胞実験で大腸癌細胞株における進展刺激によって変化するシグナル伝達経路を見出し、上記mediator発現との因果関係があるかを、責任経路に対する阻害剤投与などにより解析する。さらには、in vivoでの大腸癌モデルで、阻害剤投与が神経侵襲の抑制や腫瘍増殖の抑制につながるかを検討する予定である。
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