研究課題/領域番号 |
20K21632
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
泉谷 裕則 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90419200)
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研究分担者 |
坂上 倫久 愛媛大学, 医学系研究科, 講師(特定教員) (20709266)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 脂質代謝 / プロスタグランジン / AS / 大動脈弁狭窄症 |
研究実績の概要 |
大動脈弁間質において起こるカルシウム沈着は弁間質細胞の骨芽細胞への分化によって引き起こされると考えられている。これまで我々は、大動脈弁置換術によって切除された大動脈弁組織を用いて弁間葉系幹細胞(VIC)の培養系樹立に成功した。その中でも石灰化由来VICと非石灰化VICに分け、それぞれの細胞から核酸を抽出し、網羅的遺伝子発現解析によって両者の遺伝子プロファイルを明らかにした。データセットを基にした詳細なシグナル経路解析の結果、骨芽細胞を司る遺伝子としてPTGS1を同定した。本酵素はプロスタノイドを産生する上流酵素であるが、大動脈弁狭窄症発症における役割については不明である。本年度では、遺伝子発現データセットから見えてきた特定の脂質分子を代謝する酵素に着目し、RNA干渉法を用いてその代謝酵素の機能解析をin vitroで実施した。その結果、非石灰化由来VICに対してCONT siRNAを導入した骨芽細胞分化誘導したVICに比べて、標的酵素に対するsiRNAを複数回導入したVICは骨芽細胞への分化が有意に変化することを新しく発見した。この結果は、骨芽分化誘導シグナルとPTGS1の下流に位置する代謝産物とのシグナルクロストークを示唆するものである。現在その代謝産物を特定し、骨芽細胞分化への誘導効率に与える影響について詳細に解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床検体由来VICについては初代培養であるため細胞の種類によって骨芽細胞分化効率が異なり、石灰化評価のための表現型解析の条件検討に予想外にも多くの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
新しく発見した骨芽細胞分化に重要な脂質代謝酵素に対して、どのような分子メカニズムで骨芽細胞分化を制御するのかについてはいまだ不明である。そこで、同定した代謝酵素の機能については、ノックダウンまたは過剰発現によって、また代謝産物の活性については当該化合物およびその類縁体化合物の添加により分化効率と官能基との関係を評価することで解明する予定である。また骨芽分化に必須の転写因子であるRUNX2の発現パターンについても調べ、骨芽分化シグナルとのクロストークについて明らかにする予定としている。。
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次年度使用額が生じた理由 |
調整した臨床検体由来VICの骨芽分化効率の違いから、安定した骨芽細胞分化評価系の樹立に時間を要したため。そのため、当該年度に実施できなかった研究については次年度に計画通り実施する予定である。
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