研究課題/領域番号 |
20K21635
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
天谷 文昌 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60347466)
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研究分担者 |
中川 貴之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30303845)
大橋 憲太郎 岐阜大学, 工学部, 准教授 (50332953)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 自然免疫 |
研究実績の概要 |
本研究は、知覚神経におけるミトコンドリア機能の低下がパターン認識受容体Nod like receptor (NLR)を介して自然免疫を活性化し、正常な痛覚伝達システムを破綻させることで慢性痛を引き起こすという仮説を検証する。 前年度までの研究において、アンチマイシン(ミトコンドリア電子伝達系酵素阻害剤)をマウスに髄腔投与し、行動解析により痛覚過敏を評価したが、明確な痛覚過敏の観察は不可能であった。 一方、末梢神経損傷モデルを作成し、後根神経節におけるミトコンドリアDNA量の測定やミトコンドリアタンパクの定量を行って慢性疼痛モデルにおけるミトコンドリア機能を評価したところ、痛覚過敏発症に一致してミトコンドリア機能の低下が認められることが示された。 そこで今年度は、一次知覚神経における神経細胞内免疫反応の評価をマウス急性痛モデルを用いて行った。マウス術後痛モデルを作成し、NLRが活性化することで合成されるcleaved IL-1beta (cIL-1b)の発現を免疫組織化学法によって同定した。術後痛モデルマウスでは知覚神経におけるcIL-1bの発現が優位に上昇することが明らかとなった。また、cIL-1bの合成に関わるカスパーゼ1の一次知覚神経における発現を調査したところ、知覚神経の細胞体にカスパーゼ1が存在することが明らかとなった。 これらの所見より、一次知覚神経のカスパーゼ1の働きにより知覚神経で合成されるcIL-1bが術後痛モデルにおける痛覚過敏の成立に関わる事が示唆された。 今後、カスパーゼ1阻害剤の投与で痛覚過敏が抑制されるか検証するとともに、慢性痛モデルにおける知覚神経cIL-1b活性変化とミトコンドリア機能との関連を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経組織におけるcIL-1bの発現を定量的に評価する実験系の確立に成功した。カスパーゼ1の発現を解析する実験系の確立に難渋したが、新たなin situハイブリダイゼーションの手法であるRNAscopeアッセイをマウス後根神経節において確立することで解決している。一方、行動解析を実施するにあたり必要な資材の調達に時間を要したため、今年度実施する計画の実験を行うことができていない。現在、資材の入手は可能となっており、次年度以降の実施を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に確立したcIL-1b、カスパーゼ1活性の解析方法を慢性痛動物モデルの一次知覚神経に応用するとともに、動物モデルにおいてcIL-1b、カスパーゼ1活性とミトコンドリア機能との関連を調査する。さらに、ミトコンドリア機能改善薬の投与がcIL1bやカスパーゼ1活性を抑制することで痛覚過敏を抑止できるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染対策のため、実験に必要な資材の調達が困難であり、計画していた実験の一部を次年度に実施せざるを得ない状況となった。現在、調達状況は改善している。
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