研究課題/領域番号 |
20K21636
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
池田 和博 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30343461)
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研究分担者 |
井上 聡 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40251251)
佐伯 俊昭 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50201512)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 乳がん / 子宮がん / ミトコンドリア / 三次元培養 / 代謝 |
研究実績の概要 |
がんは年々増加しており社会的問題となっている。がん幹細胞様細胞(CSC)は、腫瘍内に少数存在し、自己複製能と、腫瘍を構成するさまざまな系統のがん細胞を生み出す能力(多分化能)を併せ持つ細胞である。がん幹細胞様細胞は抗がん剤や放射線への抵抗性を有することから治療の際に残存し、再発・転移の原因となることが想定されており、がん幹細胞様細胞を標的とした治療法の確立が希求されている。がん幹細胞様細胞では、解糖系が亢進していることからミトコンドリアは重要ではないと考えられてきたが、最新の研究により、ミトコンドリアの量や機能が亢進していることが報告され、逆にミトコンドリアが重要であるとの提唱もされている。我々はミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成促進因子COX7RPを世界に先駆けて発見し、ミトコンドリア代謝の重要性を提唱した経験から、がん幹細胞様細胞では未知のミトコンドリア制御因子の存在を予想し、本研究で明らかにすることを目的としている。がん組織を用いた三次元スフェロイド培養はがん幹細胞様細胞を選択的に濃縮し、長期培養可能な系として最近開発された手法である。本研究では、倫理基準を満たしたがん臨床検体より三次元スフェロイド培養を行い、patient-derived cancer cell (PDC)の樹立を進めている。樹立したPDCの幹細胞マーカー、ホルモン受容体などの発現を確かめ、幹細胞性の特徴とホルモン応答性を解析する。また、PDCを免疫不全マウスに移植して腫瘍を形成させ、患者原発巣の特徴を再現しているか明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん組織を用いた三次元スフェロイド培養はがん幹細胞様細胞を選択的に濃縮し、長期培養可能な系として最近開発された手法であり、培養に至適な条件を見出している。そこで、倫理基準を満たした女性がんをはじめとするがんの臨床検体より三次元スフェロイド培養を行い、patient-derived cancer cell (PDC)の樹立を目標に培養を開始している。また、複数種のがん培養細胞株を用いてCOX7RPの発現機能解析を進めており、研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においてさらに症例数を追加し、組織型等の異なる多様性に富んだがんPDCの樹立を目指して培養を行い、ミトコンドリアの解析に用いる。このように複数の組織型、ならびにホルモン依存性と非依存性の女性がんなどのPDCからミトコンドリアを調整し、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の構成を明らかにする。これらの因子には、呼吸鎖複合体のサブユニットそのものの他に、超複合体の形成や機能調整に関わる因子が含まれていると予想している。がん種・組織、ホルモン依存性などに特異的な超複合体の制御因子を想定しており、候補因子を抽出する。有望な候補因子については、臨床サンプルを用いて病理学的解析を行う。これらの解析により診断・治療への応用性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者由来がん組織を用いた三次元培養法の条件検討を重ねる中で最適化が進み、培地、添加物、超低接着培養皿等の消耗品を少なくすることができ、当初予定した培地試薬関連の使用量が抑えられた。今年度はより患者検体数を増やして検討し、多くの組織型、ホルモン依存性の異なる患者サンプルを用いた検討を行う予定である。
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