研究課題
再生医療や組織工学の進歩により生体組織の代替材料の開発が進んでいるが、弾性や剛性といった高い力学的特性を求められる血管は生体材料で作製することは非常に困難である。すなわち、血管グラフトは再生医療では大きく取り残された領域である。臓器は多様な細胞外マトリクスの複合体(=マトリクソーム)が適切に構築されて本来の機能を発揮することから、現在の人工血管は極めて非生理的であり、石灰化や成長に伴う狭窄など問題点が多い。また、異種脱細胞組織も細胞外マトリクス糖鎖の抗原性のため長期耐用性は無いことから、次世代人工血管が求められている。本研究は、超高圧低酸素培養法を用いてヒト由来細胞由来の細胞外マトリクスのみから構成される生理的な人工血管を作製し、大型動物でその耐用性・成長性を検討することを目的とした。本年度は、ヒト血管平滑筋細胞の高圧力・低酸素感知機序の解明を目指して、加圧条件と酸素分圧を組み合わせた4通りの条件にてヒト臍帯動脈平滑筋細胞を培養しRNAseqを行った。さらに、この中で最も平滑筋細胞の積層率が良かった条件で10層の細胞シートを作製し、応力ひずみ曲線を用いた解析を行った。破断応力が1000 mmHgを超える細胞シートが再現性良く作製できることが明らかとなった。この培養条件では、通常の大気圧培養に比べて40余りの遺伝子が有意に増加することが分かった。これらの遺伝子の発現増加は、加圧によっても低酸素によっても認められたが、低酸素下で加圧すると相乗効果的に認められることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
ヒト血管平滑筋細胞の高圧力・低酸素感知機序の解明を目指した網羅的遺伝子解析を終えて標的分子を見出すことができた。さらに、血管シート作製条件を得ることができた。
ヒト血管平滑筋細胞の高圧力・低酸素感知機序の解明をさらに行い、細胞シート内マトリクスの解析、大型動物への移植を行う予定である。
加圧装置の購入のために前倒し請求を行ったが、最終的にコストを抑えることで前倒し請求分が一部残ったため。繰り越した分は当初の予定通り試薬や培養一式にかかる費用に充てる。
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