研究課題/領域番号 |
20K21642
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 俊明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90191858)
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研究分担者 |
大学 玲子 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (10770604)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | HMGN1 / 網膜色素上皮細胞(RPE) |
研究実績の概要 |
エネルギー代謝は生命に必須であるが、代表的代謝の解糖系と関連する代謝シグナルは核酸や脂肪の生合成にかかわり癌細胞は優先的に利用して自己を複製する。我々は核に移行して発現する蛋白High-mobility group protein (HMGN1)が解糖系などエネルギー代謝にかかわることを明らかにした。HMGN1が核に局在する網膜色素上皮は、関連する代謝を利用できるので特定の刺激でリプログラミングを起こし、増殖することができ眼内増殖疾患の主要細胞になれると考えた。しかし、マウスの場合、通常飼育では視細胞はHMGN1が細胞質に限局するので視細胞のエネルギー代謝は異なると考え、これが視細胞のエネルギー代謝を特殊なものにして、再生できないことに関連すると推測した。そこで、最終的に視細胞の細胞質に局在するHMGN1を核に移行させ、必要時にHMGN1本来の機能を復活させ視細胞増殖、すなわち再生の引き金になる可能性を探ることを計画した。今年度はまずHMGN1の存在の有無がエネルギー中間代謝産物に与える影響を検討した。HMGN1をsiRNAとCRSPRで欠損させることでTCA回路が抑制されるが、TCA回路中間代謝産物の一部はアミノ酸など他の代謝産物に組み込まれることが判明した。また、全RNA解析も行いこれまでの結果、中間代謝産物に合致する遺伝子発現の変動を確認した。さらにグルコースの取り込みに制限が生じ、またグルタミンの代謝も障害されることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析に必要なHMGN1欠損細胞の作製とsiRNAによる部分的なHMGN1欠損細胞の検討ができた。さらにHMGN1KOマウスの眼の解析が進み、その他の遺伝子改変マウスとの交配も開始したので、来年度はさらにin vivoでの解析に進める。
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今後の研究の推進方策 |
マウスよりも大きい豚、牛、ヒトのいずれかの眼球を利用して抗HMGN1抗体と結合する蛋白質の解析を行う。また、同時に交配したマウス眼球の解析で現在までに確認された網膜機能障害への影響を環境因子(特に食事)から検討する。明暗や食事の影響が特に視細胞のHMGN1の局在に影響を与える可能性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
HMGN1の機能を追求していたが、非常に興味深い結果がでてきた。これを確認するための実験を計画し予算を計上したが、コロナなどの影響で試薬が予定日に届かず一部がまだ開始されていない。予算はタイトに計画されており、この実験が無駄にならないためにもR3に繰越して、特にHMGN1がアミノ酸リセプターに与える影響の確認に利用したい。
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