研究課題/領域番号 |
20K21646
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山岨 達也 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60251302)
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研究分担者 |
木下 淳 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10755648)
樫尾 明憲 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20451809)
鴨頭 輝 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30807152)
藤本 千里 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60581882)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 蝸牛 / autophagy / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
加齢性難聴と二酸化ゲルマニウムによるmitochondria機能障害動物を用い、聴覚機能をABR等で評価し、組織は透明化技術等を用いて網羅的に観察し、細胞内ミトコンドリアの状態と量、Mitophagyの蝸牛内分布などを解析した。また蝸牛内のMitophagyやミトコンドリア生合成等に関する遺伝子、ミトコンドリア機能やMitophagy の重要なマーカーの量を難聴出現前後の異なる時期で調べた。二酸化ゲルマニウムによる障害動物ではさらにタウリン、コエンザイムQ10、水素水による障害予防効果についても調べ、この順で難聴の予防効果および血管条やラセン神経節細胞の保護効果があることを見出した。また酸化還元酵素の補酵素であるpyrroloquinoline quinone(PQQ)の過酸化水素誘発性早期老化モデルに対する効果を検討し,その作用機序をin vitroで検討した.HE=OC1細胞を過酸化水素(100μM)に曝露し、PQQで1日処理された。この過酸化水素による細胞老化モデルではミトコンドリア呼吸能力が障害されていたが,PQQ(0.1 nMまたは1.0 nM)で前処理した細胞ではその障害は軽減していた.PQQを処理刷る前にはミトコンドリア電位の低下、ミトコンドリア融合の促進、ミトコンドリアの移動の加速がすべて観察されたが、PQQによりその障害は抑制された。また,過酸化水素暴露下ではsirtuin 1(SIRT1)およびPGC-1αのタンパク質発現は有意に減少したが,PQQ前処理により増加し,PGC-1αのアセチル化は有意に減少した.結論として,PQQはHEI-OC1聴覚細胞早期老化モデルに対して保護作用を有し,SIRT1/PGC-1αシグナル経路,ミトコンドリア構造およびミトコンドリア呼吸能に関連することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により更なる研究実施計画の変更を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
加齢性難聴マウスにおいて、聴覚機能と組織の変性について経過を追って調べ、老化抑制介入をしたマウスを解析して比較する。聴覚機能は聴性脳幹反応(ABR)等により評価する。組織学的評価は我々が開発した透明化技術、切片、surface preparationを用い、有毛細胞、血管条、ラセン神経節などを網羅的に観察する。さらに蝸牛内の異なる細胞におけるミトコンドリアの状態と量、Mitophagyの蝸牛内の分布とその強度について調べる。Mitophagyの検出には蛍光タンパク質Keima-Red、蛍光試薬Mtphagy Dye等を用いる。また蝸牛内のmitophagyや加齢に関する遺伝子やミトコンドリア生合成に関する遺伝子の発現、mitochondrial DNAのcopy numberについて、実験開始前、難聴出現後(および経過途中)の異なる時期で調べる。ミトコンドリア機能、オートファジー、Mitophagy の重要なマーカーの蝸牛内タンパク量もWestern blottingで定量する。in vitroではHEI-OCI細胞に酸化ストレスとして過酸化水素等を暴露した老化促進モデルにおけるミトコンドリアの変性、細胞生存率、膜電位やATPの変化、ROSの発現を調べ、同時に遺伝子解析・Western blottingも行い、Mitophagyとの関与を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により使用計画を変更したため。
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