神経線維腫症Ⅰ型(NF1)は全身に多彩な症候を呈する常染色体優性遺伝疾患である。約3500人に1人の割合で出生し、遺伝疾患の中では比較的頻度が高いとされている。NF1に特徴的な神経線維腫はplexiform neurofibroma(pNF)とcutaneous neurofibroma(cNF)があるが、NF1の95%に合併するcNFは未だに外科的切除以外の治療法がなく、根治できておらず可及的な手術加療を行うのみとなっている。手術加療以外の治療法として、最近、海外ではpNFに対してMAPK/ERK kinase inhibitor(MEK阻害剤)が有用であると報告されている。これはNF1では、細胞レベルでRas/MAPK経路とPI3K/AKT経路が活性化されているからである。NF1モデルとして、細胞レベルでMEK inhibitorの影響をより詳細に検討することとした。NF1不死化細胞株を購入し、培養方法の手技および安定性について検討を行った。また、報告されているように持続的なERK経路の活性化が起こっているかをWestern BlottingおよびRealTimePCRを用いて検証した。NF1細胞株は持続的にERKが活性化していること、selmetinib(MEK inhibitor)で増殖およびMAPK経路が阻害されること、またその際に必要な至適濃度を求めた。その結果、NF1細胞によるMEK経路阻害の評価モデルを確立した。当初の計画にはなかったが、形成外科にFACSが導入されることとなり、細胞周期の直接的な評価が可能となった。予備的な段階ではあるがMEK経路阻害によりNF1細胞の増殖が止まる詳細なメカニズムが明らかになりつつある。さらに新規阻害剤との併用での作用を検討し、従来品のselmetinibとの併用で高いMEK pathwayの阻害効果を示すことがわかった。
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