研究課題/領域番号 |
20K21655
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大内 淑代 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (00253229)
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研究分担者 |
藤田 洋史 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (20423288)
佐藤 恵太 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (80725622)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | オプシン5 / Opn5 / 眼球成長 / 紫外光 / 近視 / Fgf10 |
研究実績の概要 |
本研究では、眼球が前後軸に伸長することが原因となる軸性近視の病態を解明するために、環境因子として紫外光受容光受容体オプシン5 (Opn5)、遺伝因子としてFgf10に着目している。令和3年度は、ヒト組織を用いたOPN5の局在研究を進めた。まず、計画していたRNAscope法にてOPN5 mRNAの検出を試みた。新規にデザインしたOPN5プローブ、陽性対照であるPPIBプローブを、国際共同研究により入手できたヒト延髄に対して反応させRNAscope法を行った。その結果、PPIB mRNAは検出できたがOPN5は検出できなかった。そこで、ヒトOPN5の一部の精製蛋白を抗原とした新規抗体を用いて、ヒト延髄ほか6カ所の脳組織におけるOPN5蛋白質の局在を調べた。これら脳組織いずれにおいても一部の細胞にOPN5陽性シグナルを得た。次に、OPN5陽性視床下部細胞の細胞型同定を試みたところ、OPN5とプロスタグランジンE受容体3とが共局在する細胞が存在した。今後、適切な保存状態のヒト眼球を得てOPN5の局在を明らかにする。昨年度より条件検討してきたSABER-FISH法は、メダカ組織でOpn5 mRNAの検出に成功しほぼ確立できたため、他動物組織での検討を行っている。本研究計画では、ヒトiPS細胞を用いて眼球伸長の分子機構を解明する。関連研究として、ヒトiPS細胞より作製した先天性網膜変性疾患のモデル細胞の病態解析を継続し、酸化ストレスの関与した細胞死による形状異常を見出した。Opn5 GPCRシグナル系に関連して、ヒト培養細胞HEK293T細胞を用いてOpn5とGqとの共役を明らかにした。後方への急激な眼球伸長を伴う病的近視において、網膜色素変性症(RP)を伴うことがあり、関連研究として、日本人に多い常染色体潜性RPの原因遺伝子であるEys欠損メダカを作製し解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度計画として、Fgf10+/-ヘテロ接合体マウスを用いて、若年マウスへの紫光照射で眼軸伸長が抑制されるか検証実験を行う予定であった。しかし、Fgf10+/-ヘテロ接合体マウスの繁殖に遅れを生じたため、上述の組織学的解析に注力した。依然としてコロナ禍等の影響のため海外製品・試薬の納入に遅れが生じたが、可能な実験から遂行してきており、概ね研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、(1)Fgf10発現低下マウスを用いた実験、(2)ヒト組織を用いたOpn5とFgf10の局在研究を進める。(1)では、Fgf10+/-ヘテロ接合体マウス眼球の組織学的解析、若年マウス眼球組織における紫光照射の影響について解析を行う。(2)については、今回ヒト組織で利用可能なことが確認できたOPN5抗体を用いて、免疫組織化学法を行う。適切な保存状態のヒト眼球を得てOPN5蛋白質の局在を明らかにする。さらに、SABER-FISH法を用いて、OPN5とFGF10のmRNA局在解析を行い各細胞の型を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外より購入する試薬等の納入遅延が積み重なり次年度へ研究をまわさざるを得ない事態が生じた。
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