研究課題
本研究では、眼球伸長性近視の病態解明のため、環境因子として紫外光A(UV-A)とその受容体オプシン5(Opn5)、遺伝因子としてFgf10に着目した。網膜や眼球壁の細胞がUV-AをOpn5を介して受容し、GPCRシグナル系がFgf10シグナル系を駆動し、細胞外基質等の遺伝子発現を変え眼軸伸長を抑制するとの仮説をたてた。本年度は、生後1日の鶏と成体メダカの眼球壁、強膜軟骨細胞の一部に、哺乳類型Opn5 (Opn5m)とGタンパク質αサブユニットG14のmRNAが共局在することを発見し報告した。眼球壁の特定の部位、鶏では背側前眼部近傍、メダカでは背側後極部近くの数個から10数個(一切片あたり)の細胞に、Opn5mとG14 mRNAが共局在していた。HEK293細胞において、Gqファミリーの中でG14が最も効率よくUV-A照射時にOpn5mを活性化し、細胞内Ca2+濃度を上昇させた。鶏、メダカ網膜のOpn5m発現細胞にはG14 mRNAが共局在せず、眼球壁のOpn5m-G14シグナル系が、網膜Opn5mシグナル系とは異なった機能を担うと考えられた。さらに、Fgf10+/-(ヘテロ接合体機能喪失)マウスのハーダー腺 (HG)萎縮がいつどのくらいの割合で起こるか解析した。その結果、半数以上の個体で生後約2週までに片側のHGが萎縮していた。HGは、眼球後部に発達する大きな眼窩内腺であり、HGの有無が眼球形状に影響を及ぼす可能性がある。研究期間全体の成果:初年度に確立した高感度ISH法であるSABER-FISHが、最終年度の眼球壁におけるOpn5 mRNA局在の同定に繋がった。令和3年度には、ヒト組織にOpn5タンパク質が存在することを同定した。令和4-5年度の研究から、Fgf10+/-マウスの光照射実験ではHG萎縮のある個体とない個体とを区別して用いる必要があることが示唆された。
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