研究課題/領域番号 |
20K21658
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田口 和己 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (00595184)
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研究分担者 |
安藤 亮介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30381867)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
岡田 淳志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (70444966)
濱本 周造 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80551267)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 尿路結石 / シュウ酸カルシウム結石 / オステオポンチン |
研究実績の概要 |
10サンプルのシュウ酸カルシウム結石から、平面研磨によって構造観察や成分分析が可能な厚さ20μmの薄片を作製し、以下の研究を行った。研究1:偏光顕微鏡を用いた尿路結石の結晶構造を観察した。研究2:フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)を用いた無機成分の分布構造解析を行った。研究3:蛍光免疫染色を用いた有機成分(osteopontin(OPN), Renal prothrombin fragment 1(RPTF-1), calgranulin A(Cal-A))の分布構造解析を行った。 研究1:偏光顕微鏡観察の光学的特徴から、結石中心部では、層状構造を呈した結晶領域(A)、直径50μmの結晶で構成された領域(B)、辺縁部では、直径10μm以下の結晶で構成された領域(C)に分類できた。研究2:研究1の領域(A)、(B)では、シュウ酸カルシウム一水和物(COM)99%に対して、領域(C)では、二水和物(COD)40%を含んでいた。研究3: 領域(A)では、OPN、RPTF-1のみが層状かつ数μm均一の間隔で分布していた。領域(B)(C)ではOPN, RPTF-1は結晶内に分布するものの、Cal-Aは結晶粒界に分布していた。 さらに我々は10サンプルの追加分析から、尿路結石を構成するCOM、COD結晶の種類、およびそれぞれの結晶サイズ・構造の類似性から4つのTypeに分類した。結石中心部では、数μm大のCOM結晶から成る顆粒状領域(Type1)と、数十μm大のCOM結晶 から成るモザイク状領域(Type2)を確認した。辺縁部では、数nm大のCOM結晶から成る層構造領域(Type 3)と、数十μm大のCOD結晶から成る領域(Type 4)を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回、尿路結石内の無機成分・有機成分の分布を調べるためのFT-IR、偏光顕微鏡観察などを行った。 特に有機成分についてはCa結合部位を含む蛋白に限定しているため、今後はLS-MSなどを使用してんぼ網羅的な解析から多分子としてのマッピングを行う予定である。 また、尿路結石検体も引き続き前向きに収集を行っており、臨床情報に紐付けされた解析を行う計画をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「尿路結石を構成する有機分子の構造・分布情報解析」として、有機成分の同定・マッピング解析をすすめていく。①LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析)を用いた有機分子測定。結石内の多種の有機成分をLC-MSにて同定する。各有機成分の分子量と化学構造を決定する。②蛍光免疫染色を用いた有機分子の分布情報解析。有機分子の局在を蛍光免疫染色で可視化する。さらに同じ結石薄片で蛍光二重染色法を用い、有機分子間での分布の違いをみる。③MALDI-TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)による有機分子の質量分析解析。熱に不安定で他の方法では分析困難な結石サンプルについて、本法により有機分子を可視化し分布をたしかめる。とくにSEM-EDSにて有機分子がみられる領域に本法を適用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床で得られる尿路結石から、薄片を用いた全く新しい解析方法を確立し、無機成分や有機成分の分布情報と核形成から成長過程における構造変化などの情報を抽出し、鉱物学・隕石学的プロファイリングによって尿路結石の形成機序を解明することで、新規予防法の創設を目指す研究である。計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定してていた研究を進めることができなかった。このため次年度使用が生じた。次年度は効率的に研究を進めていきたい。
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