研究実績の概要 |
50週齢のDBA2Jマウスは虹彩萎縮を自然発症し、ヒトの虹彩萎縮に伴う水疱性角膜症に類似した角膜内皮細胞の減少がみられる。DBA2JにNicotinamide mononucleotide(NMN)100,300mg/kgを1か月間投与して、角膜内皮細胞の障害が軽減されることを見出し、3回の追試を行い、NMN全身投与による角膜内皮細胞のレスキュー効果を確認した。さらに、NMNによる角膜内皮細胞のレスキュー効果をみるため、NMN1か月間投与後の組織染色で、アポトーシスを検出TUNELでは染色されないこと、加齢性変化を検出するβGalactosidaseで染色されること、角膜全体のRT-PCRで、NMN投与なしと比較してNMN投与300mg/kgでミトコンドリアのアポトーシスに関与するbcl-2の発言が有意に低下し、CDKN2Aが8週齢と比べて50週齢で有意に上昇するがNMN投与では変化がないこと、R-spondin, Fibronectin1, Snail, ACTA2, NQ01に8週齢と50週齢で差がなく、NMN投与によっても変化がないことがわかった。しかし、このRT-PCRは角膜全体のmRNAを比較していて、上皮や実質の免疫細胞にも影響をうけるため、再度、角膜上皮を除去して追試予定である。ヒトの角膜内皮細胞を角膜実質から剥離して、24時間ストレスを与えた角膜内皮細胞をNMN投与ありなしで比較した。NMN投与群で有意に角膜内皮細胞の障害が減少していた。さらにこれらからRNA抽出しRNAseqを行った(データ解析中)。また培養上清を保存しており、来年度上清中のプロテオミクス解析をする予定である。今後、我々の施設でNMNなどの薬剤効果をEx vivoで判定するためにヒトの角膜内皮細胞の培養系を確立し、薬剤効果の判定を行う実験基盤を確立した。
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