研究課題/領域番号 |
20K21664
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
伊藤 哲史 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (90334812)
|
研究分担者 |
日置 寛之 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00402850)
西村 幸司 帝京大学, 医学部, 講師 (20405765)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | ウイルスベクター / 経シナプス感染 / 順行性 |
研究実績の概要 |
本年度は2種類の実験を行った。 実験1では、A3Vを正常な神経回路に適用し、これがシナプスに限局して感染が広がっていく経シナプスベクターであるか、また逆行性性質を持たない順行性ベクターの性質を持つか、について検証を行った。検証は聴覚伝導路を始めとする様々な脳領域のシナプス構築についての経験が豊富である研究代表者(伊藤)が行った。これによって、たしかにA3Vがほぼ順行性に限ったシナプス超え能力を有していることや、毒性が殆ど見られないことが確認された。また、A3Vと、経シナプス感染を起こさない他のAdeno-Associated Virusを比較すると、キャプシド表面露出部のアミノ酸配列がかなり異なっていることがわかっている。そこでキャプシドのコンストラクトの詳細を他のAAVと比較検討を行った(研究分担者・日置)。 実験2は薬剤存在下で神経活動を強力に抑制する遺伝子工学ツールhM4Diを神経路特異的に導入し、遺伝子治療を試みるものである。具体的には、A3VにhM4Di遺伝子を搭載したベクターを開発し、大音響暴露後耳鳴の症状緩和を試みる。音響暴露後耳鳴りは、大音響暴露に伴い起こる内耳損傷を原因とし、求心性入力の減少を補償する聴覚系神経路の興奮性増大によって起こる難治性の病態である。A3Vを用いて聴覚伝導路全体にhM4Di遺伝子を発現させることで神経活動を低下させ、これによって症状が緩和されるか、行動実験によって確認する。そこで、今年度はまず内耳異常の行動実験による解析のための環境構築を行った(研究分担者・西村)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が年度途中で研究機関を移籍したため、研究環境の立ち上げの間完全に実験が止まってしまった。一方実験ができていなかった期間に現段階のデータをまとめて論文を執筆することができたため、「やや遅れている」と判定した。
|
今後の研究の推進方策 |
実験1のA3Vの基本的性質については概ね解析が終了したため、21年度中にこの内容をまとめて論文発表を目指す。21年度には、A3Vプラスミドを改造することによってhM4Diを搭載したベクターを作成し、これを動物内耳に注入することによる聴覚伝導路・前庭伝導路への遺伝子導入をするところまで持ち込みたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は2020年10月に所属機関を移籍した。移籍先の研究室は本研究に必要な設備を一切欠く状態であったため、引っ越しの前後で研究を実施できない状況に陥った。このため、20年度の支出は主に新しい所属での研究環境(P2A実験環境・動物飼育設備)の構築のための物品購入に留め、繰り越し金(次年度使用額)は実験が本格化する2021年度に集中的に利用し、実際の研究に必要な消耗品・試薬類を購入することとした。
|