研究課題/領域番号 |
20K21667
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
井上 聡 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40251251)
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研究分担者 |
堀江 公仁子 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (90261982)
市川 智彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20241953)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 患者由来がんモデル / スーパーエンハンサー / 転写制御 / 前立腺がん |
研究実績の概要 |
本研究は、去勢抵抗性前立腺がんモデルを患者由来がん培養系から構築し、その細胞培養系において病態特徴的な遺伝子発現を規定する転写制御機構、とくにスーパーエンハンサー領域を同定して、それを支配する調節因子とスーパーエンハンサー領域近傍の因子を標的とする去勢抵抗性前立腺がんに対する新規治療法開発を目指すものである。研究方法としては患者症例からの前立腺がん組織、特に去勢抵抗性前立腺がん組織から三次元培養技術を用いて長期に継代可能ながん培養系を樹立し、さらにその細胞培養系をマウスに移植し腫瘍形成させ、去勢抵抗性前立腺がんモデルとして確立する。本研究では、病態特異性を規定するスーパーエンハンサー領域と関連因子、それを支配する調節因子を同定することにより、去勢抵抗性前立腺がんの病態を明らかにし、診断・治療への応用を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難治性の去勢抵抗性前立腺がん(CRPC: castration-resistant prostate cancer)モデルを患者由来がん組織から複数構築した。これは、動物にも生着し患者由来がんモデルとして役立つものと考えられる。このように、実臨床を近似するがんモデルを構築し、次世代シーケンサー解析に進むことができた。これらの成果として、スーパーエンハンサー抽出にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト前立腺がん、特にCRPC組織から、申請者らが注力して最適化した三次元培養法を用いて患者由来がん培養系(PDC: patient-derived cell culture)を樹立でき、次世代シーケンサー解析が進んだ。今後は、前立腺がんPDCを超免疫不全マウスに移植した系として、PDX(patient-derived xenograft)モデルとしてin vivoでの腫瘍増殖性や病態・機能解析を進めていく。スーパーエンハンサーを含めたPDC/PDXでのがん生物学的性質を解析し、患者由来前立腺がんモデルにおいてどのように転写制御システムが変化しているかを解析し、新たな治療戦略への基礎データとして活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費として患者臨床検体からがん培養系を構築するため、至適化した特殊な培養液や試薬、プラスチック製品が必要となったが、今年度は順調に樹立とその次世代シーケンサー解析が進み、次年度の機能解析に向けての次年度使用の経費として確保することができた。このため、機能解析の成果が深まることが期待できる。次年度にはクロマチン免疫沈降に用いる抗体や試薬など機能解析のための経費、患者由来がん細胞の移植腫瘍モデルの作製とその病態解析のための超免疫不全マウスや試薬のための経費が必要になる。
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