研究課題/領域番号 |
20K21669
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30178644)
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研究分担者 |
小川 徹 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50372321)
洪 光 東北大学, 歯学研究科, 教授 (70363083)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | セルロース・ナノ・ファイバー / 義歯床用材料 |
研究実績の概要 |
高強度,軽量で,生体安全性・親和性も高く,環境負荷の少ない次世代のバイオマス素材として注目を集めているセルロース・ナノ・ファイバー(CNF)に着目し,その特徴を最大限に発揮するCNF100%素材を開発し,その生体応用を最終目的とする. CNFは低濃度水分散体として得られるため,CNF成形体を作成する上では脱水が鍵であり,脱水条件,脱水時添加物(リン酸三カルシウム)の影響等の検討,CNF解繊度の検討を行い,現在,義歯床用アクリルレジンの約2.5倍の曲げ強度を示すCNF100%成形体の作成が可能である.しかしながら加圧脱水法では成形時間,均質化,さらにCNFの疎水化処理に課題を残している.そこで本研究では,水中でも安定なCNF100%バルク体の効率的な製作方法を探索するため,疎水化の検討,加圧脱水法の検討,高温高圧水場でのCNF再溶解・再析出によるCNFバルク体の製作の検討を行う.また加えて,作製されたバルク体の材料学的評価,加工性評価を行う. また,生体内のCNFの表面性状およびCNFに細胞が接着するかついて検討を行う.これらの結果をもとに,in vitroでの100%CNFの表面性状や生体親和性の評価,EDXによる元素分析など生体材料としてのCNFの有用性・可能性についての検討も計画している. CNFは,既存のアクリリックレジンに代わり得るものであり,また生体材料としての可能性も見込まれ,さらには資源・環境を考慮した新時代の加工材料となり,社会を大きく変革するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,疎水化の検討として,共同研究者の大井教授の指導のもと,成形前のCNFおよびバルク体への化学的な疎水基修飾を試みた.疎水基の種類と付着量を調整することによりCNF同士の結合力を制御し,バルク体の強度と疎水性の両立を図るものである.現在,短時間での疎水化の付与が確認され,疎水化の長期性や材料学的評価を行っている. また,マウス頭蓋冠由来の骨芽細胞を用いて,細胞接着性,細胞骨格,細胞数,石灰化指標などを評価し生体親和性について検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,SEMや共焦点レーザー,CCK-8およびALP活性など生体安全性についての検討を進めていく.また,口腔粘膜への応用を想定して,線維芽細胞を用いてin vitroの検討を追加して行う.並行して,CNF疎水化の効率化や物性評価を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額は、当初計画していた今年度の実験が効率的に進行したことに伴い発生した未使用額であり、R3年度の研究遂行により使用する予定である。 (使用計画) R3年度は,CNFの疎水化の最適な条件を検索するとともに、新たな有機酸の検討を行う.並行してCNFの義歯床用材料以外の生体材料としての用途についても基礎的な検討を行う予定である。そのため,骨芽細胞に加え,線維芽細胞など新たな細胞実験を計画中である.また,論文制作にかかわる経費,研究打ち合わせ及び研究成果発表旅費としても使用予定である.
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