研究課題
国内のMRSA院内感染の死者推計は,年間1万人以上である.さらに,最新の厚労省院内感染対策サーベイランスでは,国内医療機関におけるMRSA検出率が99.9%となった.そして,薬剤耐性のMRSA等に抜本対策が採られなければ,2050年以降は世界で毎年1000万人以上の死者が生じると WHO等から試算が出されている.それにも関わらず,耐性菌の新薬開発研究は,国内外で不十分という現実に直面している.米国で「薬剤耐性MRSA等の対策」,日本で「薬剤耐性アクションプラン」,そしてサミットと国連総会で「MRSA等の耐性菌対策」が提示され続けている.背景にあるのは,耐性菌の増加に伴い,治療困難となった感染者の死亡数が増加している現状である.一方で,国内外の医歯薬学領域では,腫瘍や再生等の分野に研究資源が集中し,耐性菌に対する新薬開発が停滞している.国内外の新規抗菌薬開発の特許出願ならびに論文検索を実施したところ,それらは全てβラクタマーゼを阻害する着想であり,MRSAの耐性進化を予見すると心許なかった.そこで本研究では,まずCRISPR-Casゲノム編集技術を応用し,MRSAの耐性因子PBP2’等を特異的に削除するDNA製抗菌薬の開発に挑戦した.それは,CRISPR-Cas発現のプラスミドDNAを素材とすることで,副反応の可能性が低く,耐性進化に合わせガイドRNA配列を変更するだけで薬剤標的を変更できる簡便さに富み,安価で安定なMRSA用の新抗菌薬の開発に挑戦できるからであった.次いで,新薬にも必ず耐性が生じるとの前提に立ち,標的遺伝子を簡便に変更できるCRISPR-Cas法の利点を活かし,かつ過去の基盤Bにて集積したMRSA耐性進化のデータを統合解析し,MRSAの耐性進化を見越したCRISPR-Cas型抗菌薬の設計アルゴリズム確立に挑んだ.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)
FEBS Open Bio
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Antibiotics
巻: 10(12) ページ: 1550
Microbiology Spectrum
巻: 9(2) ページ: e00318-21