研究課題
口腔レンサ球菌の一種である肺炎球菌は、肺炎の主たる起因菌である。肺炎球菌性肺炎では、宿主の過剰な炎症応答が組織を破壊し、菌が深部へ伝播すると考えられている。一方で、感染によりどのような細胞集団が遊走されるか、また細胞集団が感染にそれぞれどのように応答しているのか、詳細な情報は今まで明らかとなっていない。本研究は、感染によって引き起こされる宿主のRNA転写およびゲノムワイドのオープンクロマチン領域の変化を細胞集団ごとに解析することで、これまでにない精度での宿主応答の解明手段の確立を試みるものである。これまでの解析で、感染マウスの肺胞洗浄液を用いたシングルセル解析は困難であることが示唆された。そこで、感染マウスより肺を摘出し、自動組織分散装置を用いたシングルセル化処理を行うこととした。感染肺の解析条件について、10X Genomics社、ミルテニーバイオテク社とともにこれまでに検討を行い、専用のプロトコールを確立することに成功した。得られた解析データについて、解析プログラムScanpyを用いて、前処理、正規化、特徴量選択、次元削減、クラスタリング、深層生成モデルを用いたバッチ効果の補正、発現変動遺伝子解析を行った。また、感染肺の組織像解析、ならびにサイトカイン発現量の測定、マウス体内での菌数分布の測定などを行った。これらの結果から、肺炎球菌性肺炎において、好中球の感染時の応答の違いが病態の重症化に寄与する可能性が示された。
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