研究課題
胚発生の過程で神経管癒合部から出現する神経堤細胞は、胚内を遊走した後、定着先の環境で様々な細胞に分化して組織の形成や維持を担う。神経堤から体内を遊走し目的組織に辿り着いた神経堤由来細胞のごく一部の細胞は、成長後も幹細胞としての性質を維持し骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、神経細胞等への多分化能をもつことから再生医療の新しい細胞ソースとして期待される。体性幹細胞の増殖・分化能は個々の細胞で大きく異なるため、分化誘導後のヘテロな細胞集団から増殖と機能のバランスが良い、最適な移植細胞を選定する方法論の確立が喫緊の課題であると考えられている。この課題を克服するためには、体性幹細胞から移植細胞への分化過程における細胞内の様々な分子動態、中でも分化制御の中心的役割を果たしている転写制御の挙動を明瞭化することが肝要である。昨年度より、神経堤由来細胞がGFPでトレースできるマウスより採取した神経堤由来細胞を骨芽細胞分化誘導培地で分化誘導した際の、細胞内遺伝子発現様式を検討するためにcDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、転写因子C/EBP deltaやKlf15などの発現上昇が認められた。オープンクロマチン領域を同定することにより転写制御の網羅的解析が可能となるATAC-seq解析を行なった結果、Wdr70のプロモーター領域にオープンクロマちん領域を示すピークが認められた。本実験結果は、神経堤由来細胞から骨芽細胞への分化課程において遺伝子発現様式とオープンクロマチン領域の様式を対比させることができた結果である。
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