研究課題
骨のリモデリングとは、骨吸収と骨形成が絶え間なく繰り返されることにより、古い骨が新しい骨に置換されていくことである。破骨細胞の分化と骨吸収機能を制御する骨芽細胞に発現するRANKLのデコイ受容体であるオステオプロテゲリン (OPG) は、骨吸収をネガティブに制御する因子であるが、実は骨代謝カップリングにおいて重要な役割を果たしている分子であることが明らかとなった。我々のこれまでの研究により、OPG遺伝子欠損マウスは、骨吸収が著しく亢進するが、骨形成も亢進する骨代謝共役モデルマウスであり、歯槽骨吸収が亢進する歯周病モデルであることを見出した。RANKLの発現は骨や胸腺に限局するが、OPGは心臓をはじめ様々な臓器で産生され、加齢によりその血中レベルが上昇する。抹消血中のOPG濃度は心不全患者の重症度に応じて増加する。血中OPG濃度が高値である心不全患者の予後は悪いことが報告されている。また、OPG遺伝子欠損マウスは高血圧を呈し、加齢と共に心肥大となることを発見した。OPGの血管構造における作用機序は不明である。本研究においては、OPGがアンジオテンシンII(Ang II)誘発性高血圧症の大動脈構造に影響を与えるかどうかを解析した。Ang IIを28日間皮下投与したOPG遺伝子欠損マウス(8週齢雄)において致命的な大動脈破裂と大動脈解離が認められた。OPGの欠如は、心筋厚さの減少およびエラスチン切断数の増加、ならびにペリオスチン発現の増加と関連していた。リコンビナントOPG投与は、致命的な大動脈破裂と大動脈解離を減少させた。以上の実験結果は、OPGが、RANKLおよびペリオスチン発現を阻害することにより、AngII誘発性高血圧における大動脈破裂および解離を保護することを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
オステオプロテゲリン(OPG)がアンジオテンシンII(Ang II)誘発性高血圧症における大動脈構造に影響を与える実験結果が得られた
1 OPG欠損マウスに対するDPP-4阻害薬および心不全治療薬の投与実験 OPG欠損マウスに対して、糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の投与による骨病変、心肥大、血管石灰化および血糖値などに対する効果について解析する。2 OPG欠損マウスおよびRANKL遺伝子強発現マウスの心臓血管系の解析 RANKL遺伝子強発現マウスは、OPG欠損マウスと同様に、破骨細胞性の骨吸収が亢進し骨粗鬆症を呈する。OPGはRANKLのデコイ受容体であるので、OPG欠損マウスにおける高血圧がRANKL信号の遮断である可能性は否定できないので、RANKLTgおよび可溶性RANKL投与マウスにおける心臓血管疾患や血糖値の変動を解析する。3 OPGのRANKLに依存しない新規機能の解析 2型糖尿病モデルマウス、動脈硬化モデルマウス、アルツハイマー病モデルマウス、妊娠高血圧症候群モデルマウスなどを用いて、OPGの発現を各種臓器において解析する。OPGの結合タンパク質であるTRAILの破骨細胞分化や心臓血管構築における役割を解析するため、TRAIL中和抗体をOPG欠損マウスに投与する。さらに、OPGの新規結合因子の同定を試みる。
(理由)RANKL高発現マウスおよび可溶性RANKL投与マウスにおける心臓血管疾患や血糖値の変動解析実験が遅延したため。(使用計画)上記実験を早急に開始する予定である。
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