研究課題/領域番号 |
20K21693
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
舟山 眞人 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40190128)
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研究分担者 |
橋谷田 真樹 関西医科大学, 医学部, 准教授 (40374938)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 次世代シークエンサー / 薬剤代謝関連遺伝子 / 向精神薬 / 突然死 / SNP / 心疾患関連遺伝子 |
研究実績の概要 |
解剖時に採取した心筋から抽出したゲノムDNAを用いて,次世代シークエンサー,Ion GeneStudio S5(Thermo Fisher Scientific)により心疾患関連遺伝子および薬剤代謝関連遺伝子の変異解析を行った.試料は向精神薬を長期服用していた患者の中で司法解剖に回ってきた事例のうち,死因が心不全等心臓突然死例10例,薬物中毒死例8例,それらとの比較対照として窒息1例,肺水腫1例の計20例である.年齢は6ヶ月の乳幼児1例を除くと26-69歳(平均 42.6歳)であり,男性18例,女性2例であった.心疾患関連遺伝子はThermo Fisher Scientific社のホームページ上でターゲット遺伝子を選んでプライマーセットを設計する,Ion AmpliSeq Designerツールを用いて282遺伝子,計5404 SNPを一度に増幅するプライマーセットを設計・作成した.また,薬剤代謝関連遺伝子の解析にはIon Ampliseq Pharmacogenomics Panelによる119遺伝子,137 SNPを解析するプライマーセットを用いた.いずれもそれぞれのプライマーセットで増幅した後,ライブラリを作成しIon Chef SystemにてエマルジョンPCR後テンプレートを調整した.シークエンスは540チップとIon GeneStudio S5を用いて行い,付属のPlug-inソフトウェアおよびクラウドのIon Reporterを用いて多型解析を行なった.その結果、それぞれ複数の関連遺伝子ならびにその疑いがあるものを持つSNPが検出された.詳細については、下段の「進捗状況」を参照されたい
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心疾患関連遺伝子ならびに薬剤代謝関連遺伝子いずれも興味深い解析結果が得られた。 心疾患関連遺伝子解析では,標準のヒトゲノム配列であるhg19と比較したところ,SNPが500-1011個(平均719.2個)観察された.次にそれらのSNPの中でClinVar (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/),つまりヒトゲノムの多様性と関連する疾患についての情報を収集しているデータベースを用いてフィルタリングしたところ,5-13個の病原性またはその疑いがあるものを持つSNPが検出された.1例を除きほぼ全ての試料にてTNNI3遺伝子の変異が見られており,このSNPと突然死との関係を判断するのは更なる情報収集が必要である.また,試料によっては RYR2やSCN5Aなどこれまで突然死との関連が強く示唆されるSNPも検出されており,心疾患関連遺伝子の解析は突然死の死因究明に有効であったと考えられる. 薬剤代謝関連遺伝子の解析では137SNPタイピング結果が得られているが,中でも特にCYP1A, CYP2C9, CYP2C19, CYP2D6, CYP3A4遺伝子は薬物代謝に重要な役割を担っており,この部分のSNPに関しては,それぞれの処方された薬物と照らし合わせて判断する必要があると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究期間において、向精神薬長期服用者の突然死例は当初予定(4-6例)よりも少なかった(しかも死後経過が進んだものであった)。もっとも、従来の試料において、上述したような、心疾患関連遺伝子、薬剤代謝関連遺伝子の絞り込みができたことから、これらSNPの更なる精査を行うことは十分可能である.特に 薬剤代謝関連遺伝子では処方薬との照合が必要であるが、多くは多剤服用であるため、場合によっては過去の症例の追加解析も行う必要があるかと思われる.
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