研究課題/領域番号 |
20K21697
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小湊 慶彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205512)
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研究分担者 |
平野 瞳子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 技術職員 (20643810)
窪 理英子 群馬大学, 医学部, 技術職員 (40747127)
高橋 遥一郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50640538)
佐野 利恵 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70455955)
早川 輝 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90758575)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | OBP2B / ABO遺伝子 |
研究実績の概要 |
我々は9番染色体長腕34.3に存在するABO遺伝子の転写調節機構を調べてきた。その結果、プロモーター、赤血球系細胞特異的転写調節領域(+5.8-kb site)、上皮細胞特異的転写調節領域(+22.6-kb site)を同定してきた。ゲノム編集を用いて+22.6-kb siteを欠失した胃癌培養細胞KATOIIIを作製すると、ABO遺伝子とOBP2B遺伝子の発現が低下することが観察された。クロマチンは転写因子CTCF結合領域を介してループ構造をとり、その内部で遺伝子発現が制御されることが明らかになっている。クロマチンループ構造は連続的に変形しても性質が保たれることを考慮し、トポロジカル関連ドメイン(Topologically Associated Domain, TAD) と呼ばれる。ABO遺伝子周囲にはループ形成に基づくTADが想定されている(Lu Y et al. Nucleic Acid Res 2017)。従って、上皮細胞ではABO遺伝子とOBP2B遺伝子が同一のTAD内に存在し、同一の転写制御を受けている可能性が示唆される。すなわち、ABO遺伝子とOBP2B遺伝子はエンハンサーシェアリングをしているようにみえる。また、前述の論文ではSURF1、SURF1、ADAMTS13が同一のTAD内に存在しているが、+22.6-kb siteを欠失した胃癌培養細胞KATOIIIではSURF1、SURF1、ADAMTS13の発現が低下していた。但し、ABO遺伝子やOBP2B遺伝子の発現低下に比較すると、それらの低下の程度は少ないものであった。これらの結果からOBP2B遺伝子発現はABO遺伝子と協調していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精液の証明方法として抗オドラント結合蛋白OBP2B抗体を用いた精液証明方法を開発することを目的に、抗オドラント結合蛋白OBP2Bモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングの条件検討を行い、抗オドラント結合蛋白OBP2Bモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングの準備は完了した。そのため、抗オドラント結合蛋白OBP2B抗体を用いた精液証明方法の確立は可能である。一方、抗オドラント結合蛋白OBP2Bモノクローナル抗体を用いた免疫沈降法を開発するために、免疫沈降実験を行ってきたが、免疫沈降する蛋白に限りがあったため、抗体を抗オドラント結合蛋白OBP2Bポリクローナル抗体に変更し、免疫沈降法を行ったところ、それなりの蛋白量の沈降を得ることが出来た。そこで、市販の母乳を購入し、免疫沈降を試みようとしたが、母乳のままでは脂肪が多く、また、免疫沈降に用いる緩衝液に比べるとpHや電解質成分に差異があるため、免疫反応や沈降が生じるかについて疑問が生じており、それらの問題を解決する必要が出ている。今後は母乳の脱脂を行い、蛋白を濃縮した形で免疫沈降方法を確立する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)抗オドラント結合蛋白OBP2B抗体を用いた精液証明方法の確立 (2)オドラント結合蛋白OBP2Bに結合する分子種の探索:①母乳を用いて、免疫沈降法によりオドラント結合蛋白OBP2Bを分離し、それに結合する物質を質量分析により同定する。免疫沈降法によりオドラント結合蛋白OBP2Bを分離する予備実験は完了している。②同定された物質とオドラント結合蛋白OBP2Bとの結合に関わる生物物理学的な検討を行う。③同定された物質の生理学的な意義を解明する。ⅰ生殖:オドラント結合蛋白OBP2Bと結合物質の精子運動能の影響を調べる。ⅱ新生児栄養:母乳中のオドラント結合蛋白OBP2Bや結合物質の濃度を調べ、新生児の発育と比較する。
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