研究課題/領域番号 |
20K21706
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
平工 雄介 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (30324510)
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研究分担者 |
吉田 好雄 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60220688)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 加熱式たばこ / 出生時体重 / DOHaD / 炎症 / リスク評価 / 受動喫煙 |
研究実績の概要 |
近年、我が国では低出生体重児が増加しており、原因として母親の喫煙が重要である。出生コホート研究では、妊娠中に喫煙した女性では非喫煙者に比べて児の出生時体重が有意に少ないという報告がある。また最近、胎児期の発育遅延が成人期の生活習慣病の危険因子になるという概念(DOHaD仮説)が注目されている。近年、国内では加熱式たばこの普及が急速に進んでいるが、喫煙者および次世代への影響については不明な点が多い。本研究では、妊娠女性を対象として質問紙調査などを行い、加熱式たばこを含む喫煙状況と児の出生時体重との関連について明らかにする。令和3年度は所属機関の倫理審査委員会の承認を受け、協力医療機関の産婦人科を受診した妊娠初期(10-12週頃)の女性を対象とした質問紙調査と血清の収集を開始した。質問紙には、喫煙歴(紙巻き・加熱式たばこの喫煙の有無、1日の本数、喫煙年数)および受動喫煙の状況(家庭や職場での周囲の喫煙状況)などに関する項目を記載した。質問紙調査の状況は以下の通りである。これまで質問紙を144名分回収しており、回収率は90%である。喫煙状況について、現在喫煙者は紙巻きたばこ1名のみであった。過去喫煙者は26名(18.1%)で、内訳(複数回答)は紙巻きたばこが25名、加熱式たばこが10名であった。妊娠判明後に禁煙したのは紙巻きたばこが2名、加熱式たばこが4名であった。週1回以上受動喫煙を受ける機会があるのは42名(29.2%)で、場所(複数回答)は自宅が30名(紙巻きたばこ12名、加熱式たばこ15名、電子たばこ9名)、職場が11名(紙巻きたばこ7名、加熱式たばこ5名、電子たばこ5名)、それ以外は5名であった。次年度は、喫煙状況と児の出生時体重との関連を解析するとともに、血清中の炎症関連物質を分析して、喫煙による低出生体重のリスクを評価するバイオマーカー候補を探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は所属機関の倫理審査委員会の承認を得て、協力医療機関における質問紙調査と生体試料の収集を開始した。しかし、協力医療機関における質問紙の配布・回収および生体試料の採取を円滑に行う手順について、合意を得るのに時間を要したため、現時点では妊娠初期の情報と試料の収集に留まっている。妊娠後期および出産時の情報の収集については、令和4年度の早期から可能になる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、研究計画に基づいて継続的に質問紙調査と生体試料(血清)の収集を行う。質問紙調査および診療録から得た情報に基づき、妊娠中の喫煙習慣および交絡因子と児の出生時体重との関連を統計学的に解析する。さらに、血清の生化学的・分子生物学的分析(コチニンの定量、炎症性サイトカイン類の同時一斉分析など)を進め、喫煙に起因する低体重出生のリスクを評価するバイオマーカー候補を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、協力医療機関における質問紙の配布・回収および生体試料の収集を円滑に行う手順について、合意を得るのに時間を要したため、生体試料の分析に使用する試薬類の購入額が少なく、次年度使用額が生じた。令和4年度は質問紙調査に加えて生体試料の生化学的・分子生物学的分析を重点的に行う。そのため、研究費を主に試薬やキット類の購入に使用する予定である。
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