研究課題
【研究目的】転倒転落事故の増加は世界中の社会問題となっている。転倒転落は高齢者が要介護となる主原因であり、労働者の場合は労働災害の重大死亡事故の主原因である。平衡感覚障害は転倒転落事故に直結する為、危険因子の特定は急務である。これまでに我々はヒ素 (As) などの有害元素の飲水曝露は難聴(内耳のコルチ器の障害)のリスクを増大させる事を報告してきたが、平衡感覚 (内耳の前庭)への影響は全く分かっていない。本研究は、疫学研究と実験研究の融合により、ヒトとマウスで平衡感覚障害を誘発する有害元素を特定し、予防法を提案する。【成果】本年度はマウスの平衡感覚のリスク評価の予備的検討を実施し、平衡感覚の評価に重要な行動解析と前庭器官培養系を対象にした蛍光プローブを用いたリスク評価をセットアップできた。今後はin vivoの評価と共に、前庭器官培養系で有害元素の影響を調べたい。また、ヒトを対象にした解析で、有害元素が健康リスクに影響する新知見について論文発表できた。この研究成果では、有害元素のイメージング解析も成功した。ヒトを対象にした平衡感覚の評価の準備も順調に進んでいるので、今後、アンケート調査と共に重心動揺検査を実施する予定である。【意義、重要性】平衡感覚障害のリスク評価の情報は限られており、in vitroやex vivoで評価方法も殆ど無い状況である。本研究の成果によりリスク評価が可能になった為、より迅速に有害元素の影響を評価できる事が期待される。
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた平衡感覚障害のリスク評価のセットアップは概ね計画通りに進行している。有害元素のイメージング解析も既に着手しており、今後は様々な組織で解析出来るようにセットアップする。また、ヒトを対象にした重心動揺検査や聴覚測定の準備は計画通りに進んでいる、生体サンプル中の有害元素を測定する方法は本年度に発表した論文で既に実施しており、直ぐに測定を開始できる状態になっている。
マウスを対象にした有害元素のリスク評価を前庭器官培養系や行動解析を用いて進める。前庭の器官培養実験を行う際に、短時間で効率よく内耳から前庭器を採取する手技に慣れる事が重要である為、予備検討の回数を増やし実験精度を高める。ヒトを対象にしたアンケート調査と共に重心動揺検査や聴覚検査を進め、疫学研究も推進する。疫学調査では、交絡因子である騒音の曝露レベルについて、今後、個人曝露量を測定できる手法も準備する予定である。
次年度使用額が生じた理由:予定していた学会発表が全てオンラインでの発表に変更された為、出張の旅費の支出が減少した。また、研究協力者の事情により実験動物の繁殖・維持などの実験補助が減少し人件費の支出が減少したが、研究代表者が指導する大学院生が代わりに実験動物の繁殖・維持を担当して研究自体は概ね予定通りに進んでいる。使用計画:次年度も複数の学会発表を予定しており、出張できる状況になり次第、旅費として使用すると共に、研究をより迅速に展開する為に、研究協力者を雇用する人件費として使用する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
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