研究課題
本研究の目的は、最新のゲノム解析技術、特にロングリード解析を用い、放射線ゲノム刻印の存在を明らかにし、放射線リスク研究に、集団ではなく個々の癌における放射線影響の有無を調べる手段を提供することである。そのため、長年様々な研究で使用されている放射線誘発HPRT変異クローンを用いた。これらのクローンは、放射線に寄って引き起こされた変異を持つことがほぼ確実であり、線量依存性や化学物質によって得られたクローンとの比較解析も容易にできる。本年度は、主としてHPRT変異クローンの作成とゲノム解析の準備を行った。正常ヒト線維芽細胞をヒトテロメラーゼ(hTERT)遺伝子にて不死化したBJ1-hTERT細胞を用いた。無処理、137Csによるガンマ線照射(1, 3, 6 Gy)、またはN-ethyl-N-nitrosourea(ENU, 1 mM, 1 hr)による処理を行い、6-thioguanine(6-TG, 40 mM)存在下で培養を行い、それぞれ10~30個程度の6-TG耐性クローンを単離・樹立し、全クローンよりゲノムDNAを抽出した。次に、各エクソンの欠失状態を調べるため、HPRT遺伝子のそれぞれのエクソンを増幅できるプライマーを設定し、定量PCRにて各エクソンの欠失状態を確認した。無処理や低線量ではエクソンの欠失はほとんど見られなかったが、線量とともにエクソンの欠失が増加し、6 Gyでは全エクソンが欠失しているクローンが多く見られた。
3: やや遅れている
研究打ち合わせの予定変更や試薬や消耗品の供給不足による購入の遅れのため
全ゲノムシークエンスを施行し、詳細な解析を行っていく。
今年度は、全ゲノム解析の開始が遅れてしまったため。次年度はこれらを次世代ゲノム解析や、同定された変異の検証を行うための試薬購入に充てる予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件)
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