研究課題
腸内細菌叢は便通のみならずと心身の健康に影響することが注目されるようになってきた。本研究は、地域住民において生活習慣及び社会心理的ストレスと腸内細菌叢との関連を明らかにすることを目的とした。秋田県住民の内30~75歳の人を対象として、2019年、2021年の健診に併せて腸内細菌検査を実施し、令和4年度にも同様に検査を実施した。2019年~2022年にかけて407名(男性200名、女性207名)が受診し、菌叢は、16SrRNA gene sequences により各菌属の割合を同定した。また、腸内環境の健全さの目安である腸内細菌の多様性についてShannon の多様度指数を同定した。検査結果を男女別にみると、菌の種類数やShannon の多様度指数に差が見られなかったものの、ビフィズス菌や乳酸菌の割合は男性より女性の方が高い値であった。また、飲酒習慣を持つ人ではビフィズス菌や乳酸菌が少ない傾向が見られた。特に男性では飲酒量が1日平均2合以上の人では、2合未満の方よりもこれら善玉菌の割合がより少ない傾向が確認された。次に、Patient Health Questionnaireを用いてうつ症状の評価を行い、うつ症状と菌の種類数および多様度指数との関連をみた。その結果、うつ症状を持つ者ほど食物繊維の摂取量が少なく、ルミノコッカス属の割合が高い傾向がみられた。また、男性において、Shannon 指数が低い群に比べて高い群において、多変量調整後のうつ症状を持つ者のオッズ比が高かった。ルミノコッカス属は肥満との関連が指摘されており、脳ー腸ー脂肪連関を示唆する結果であると考える。一方、予想に反してShannon の多様度指数とうつ症状との間には正の関連がみられた。本研究は横断研究であり、因果の逆転を示している可能性があるため、今後縦断研究によって脳ー腸ー脂肪連関を明らかにする必要がある。
すべて 2023
すべて 学会発表 (1件)