研究課題/領域番号 |
20K21722
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 匡 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (20555081)
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研究分担者 |
菊池 千草 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (20444987)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 薬剤師 / 薬局 / 在宅支援 |
研究実績の概要 |
昨年度調査した愛知県内の在宅支援を行っている8薬局の結果を受けて、薬局薬剤師による在宅患者指導報告書(以下報告書)の形式を確定し、各薬局の報告書を自動的に編集・FAX送信するシステム(以下システム)を富士通株式会社と開発した。新しく開発したシステムを今年度まず新たに3薬局に導入し、積極的に医師・ケアマネジャーさらに訪問看護師等多職種に報告書を発信することを依頼し、順調に送受信ができるようになった。 先に導入した1薬局、今年度導入した3薬局の報告書の対象患者が個宅で療養する患者中心であったため、施設患者を中心に訪問指導を行っている1薬局にもあらたにシステムを導入してデータ収集を開始した。また、愛知県外で本研究のデータ収集に協力してもらえる適切な薬局からの申し出があったので、静岡県の1薬局にシステムを導入してデータ収集薬局を追加した。 システムを導入した6薬局の報告書データについて、富士通株式会社のシステムを利用して、オンライン遠隔でデータ収集するツールの開発を試みた。その結果、個人情報を匿名化し該当薬局薬剤師が情報の加工状況を確認後、大学でオンラインで情報を収集することが可能になり、データ収集の効率が格段に上がった。さらに、各薬局を訪問し、システム導入前の報告書と報告書の返信のデータを電子的に収集する作業も行い、現在、順調に報告書データの収集が進んでいる。 収集したデータは、報告書送信時の返信率、送信ならびに返信情報の内容分類解析、テキストマイニング手法を用いた解析などを試みて、多職種に情報を提供する効果の考察とどのような情報共有が多職種連携に有益であるかの検証を始めている。 さらに、研究参加6薬局の薬剤師による検討会を月1回オンラインで行って、大学のデータ分析結果を提示して一緒に考察を進めるとともに、各薬局の有効事例報告を共有して、多職種連携のレベルアップをはかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も、新型コロナウイルス感染症の影響で、薬局や患者宅等への訪問やデータ収集が困難であったが、今年度目標としていた新たに3薬局への在宅患者指導報告書自動送信システム(以下システム)導入は年度前半で実施することができた。3薬局の報告書データが十分な数ではないことを鑑み、施設在宅支援薬局を含むさらに2薬局へのシステム導入追加ができたことで、データの本格的な解析を行う準備が整った。 薬局訪問の回数を最小限にし、薬局業務への負担を軽減する目的で開発を行ったオンラインによるデータ収集が可能となり、報告書内容のデジタル保存も順調に進めることができて本格的な文書解析が可能となった。その結果、本年度中に6薬局の報告書のシステム導入前の書面データ、導入後のデジタルデータの解析を開始することができ、今後の解析方針の考察と確定ができた。 研究参加薬局の薬剤師と月1回のオンライン検討会を開始したことで、データ解析の解釈について各薬局の事情を考慮した分析を進められるようになった。また、検討会の中で、どのような報告内容、形式が多職種連携に有益かの検討も進められるようになった。 今後は 予定通りデータ収集を進め、報告書を多職種に送付するシステム導入前後による変化ならびにシステム導入後の経時的な変化について詳細な検証を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
6薬局の研究参加薬剤師に積極的な多職種への報告書送付をさらに依頼して、導入した在宅患者指導報告書自動送信システム(以下システム)によるデータ収集を進める。収集したデータから薬剤師の在宅支援に係る報告書の効果について具体的な解析を行う。まず、システムで送付している情報の送信先、送信情報への返信状況を詳しく分析して、システム導入前ならびに導入後の経時的な変化を測定して、返信を求め多くの職種に薬剤師の情報を提供することの効果を検証する。 次に、報告書の情報内容の詳細な分類と情報量を経時的に薬局間でも比較検討して、薬剤師による在宅支援が多職種連携の中で進んでいく過程を把握することで、どのような情報が各職種で評価されるのか、支援がレベルアップするためにはどのような情報をどの職種にどのように共有すれば良いのか分析、考察する。 上記の解析結果を研究参加援薬剤師との検討会でさらに考察を深め、訪問看護師など多職種の意見も聴取して、薬局薬剤師による報告書のよりレベルアップした活用方法と、それを利用した多職種情報共有システムの開発につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、研究協力薬局への訪問や研究参加薬剤師の集合などが十分にできなかったため、予定していた交通費やデータ収集や解析にかかる謝金等が余剰となった。また、データ収集、解析に必要と考えていたPCが予定より安価なもので利用可能であることがわかり、それを購入した。一方、訪問でのデータ収集等を補完するため、システム開発委託先に遠隔オンラインでのデータ収集ツールの追加開発を依頼し納品された。また、当初予定していた研究協力薬局数を越えて追加でシステム導入したため、導入のためのシステム調整やメンテナンスに費用がかかった。 繰り越した残金は、追加した研究協力薬局のメンテナンス費増にあてるとともに、協力薬局が予定より遠方になっているため訪問等の交通費にも充ててゆく。また、訪問看護師等への意見聴取の費用にも充当していく。
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