研究課題/領域番号 |
20K21723
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
渡邊 洋平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50452462)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / パンデミック化 / 適応進化 / 代償性変化 |
研究実績の概要 |
「パンデミックインフルエンザが何故これまで特定の亜型に限定されるのか」、「高病原性インフルエンザウイルスは本当にパンデミック化するのか」という問いに対する科学的根拠は極めて乏しい。本研究では、適応変異が起こったアミノ酸位をパンデミック前に戻した季節性ウイルス(H1N1/H3N2)リバータントウイルスを作成して、感染性と伝播性の変化特性を明らかにすることで、高病原性ウイルスで確認された代償性変化が過去のパンデミックウイルスで存在したのか比較・検証する。 本年度は、過去にパンデミックを起こして季節性インフルエンザウイルスへと移行したH1N1亜型とH3N2亜型のウイルスの中から、解析に用いる遺伝子バックボーンとなるウイルス株を選定してリバースジェネティクス法を構築した。また、HA遺伝子にReverse mutationとして導入する変異種とその組み合わせを選定した。さらに、ポリメラーゼ遺伝子にもPB2-E627Kに加えて相補変異の導入による複製能の調整が起こる可能性を踏まえて、パンデミック出現以降から現在までにPB2-E627Kと共に蓄積されたPB2遺伝子変異を探索した。PB2-E627Kに次いでヒト適応性に関わる可能性がある幾つかの変異を組合わせて導入すると、相乗的にヒト細胞での複製能を高めることが明らかとなった。そこで、他に探索されたPB2変異の中に過剰に高まったポリメラーゼ活性を押さえる代償性変異が導入されて進化してきたのかを次年度解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析に必要となる季節性(H1N1/H3N2)インフルエンザウイルスの遺伝子配列に基づくリバースジェネティクス法を構築すると共に、HAに加えてPB2遺伝子にも適応性変異および代償性変異が導入される可能性を踏まえて候補遺伝子の絞り込みを行った。さらに、適応性変異と推定される幾つかのPB2変異をReverse mutationとして組合わせて導入することで、ヒト細胞におけるポリメラーゼ活性が相乗的に低下することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、パンデミック前後から今日までに蓄積されたPB2変異群の中に代償性変異として複製能を押さえる変異が導入されてきたのかをminigenome assayで評価する。また、HA変異を対象にReverse mutationを導入したリバータントウイルスを作製することを計画する。さらに、高病原性インフルエンザウイルスが感染患者内においてHAとNA遺伝子の機能バランスを代償性に変化しているのかについても解析を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
季節性インフルエンザウイルス(H1N1/H3N2)に導入するHA変異の探索に加えて、ポリメラーゼ遺伝子であるPB2にちても進化過程で蓄積された変異群を探索することになり、種々の変異導入に先立ってデータベースサーチを優先して実施したため、変異導入に関わる試薬に計上していた予算を次年度に使用する。
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