研究課題
Multilineage-differentiating stress enduring (Muse)細胞は生体内に存在する多能性幹細胞である。骨髄から末梢血に動員されて各臓器に供給され、傷害や細胞死によって失われた細胞を分化によって置換・補充することで多様な臓器の修復に対応する。Muse細胞は、胎盤の免疫抑制効果を担うHLA-Gを発現する性質と、傷害組織の細胞膜から出る警報シグナル(スフィンゴシン-1-リン酸;S1P)に対する受容体を持ち、傷害部位に特異的に集積する。本研究では、傷害組織の障害修復に関わるMuse細胞の予防医学への応用を目指して、健常者における予防医学的応用、さらには妊娠、胎児・乳幼児発達といった母子保健分野における応用の可能性を探る基礎資料を得ることを目的とする。非妊婦集団を対象とした研究計画については、共同研究先病院の糖尿病外来においてフォローアップを受けている男女患者(HbA1cレベルにて正常群、軽度耐糖能異常群、糖尿病群の3群に分類している)の血液サンプルからの単核球分離により行うMuse細胞およびS1P測定の結果、糖尿病のコントロール不良者にmuse細胞数増加者が多い傾向が見られた。高血糖状態がMuse細胞の機能不全を招き、代償的に細胞数が増加している可能性があり、今後の検討課題と考えられた。妊産婦血液および臍帯血等については、産科でのリクルート、サンプル収集を行い、Muse細胞とS1Pの解析を行っている。今後は更に例数を増やしながら解析し検討をを進めていく予定である。