有害化学物質を扱う労働者の曝露指標として、尿及び血中エクソソームに含まれるmicroRNA(miRNA)がその指標として利用可能かどうかを調べるため、その第一歩としてラットにカドミウム(Cd)を投与して、尿及び血中のmiRNAを分析した。 まずWistar系雄ラットにCd溶液(CdCl2)5mg Cd/kgを経口投与し、代謝ケージに移した。対照は蒸留水を用いた。24時間後、24時間採取した尿及び血液からエクソソームを回収した。エクソソームからmiRNAを抽出後、cDNA合成し、これを鋳型に380種類のラットのmiRNAを増幅するプライマーを用い、リアルタイムPCR法でCd投与により変動するmiRNAのプロファイリングを行った。その結果尿及び血液では、Cdによって増加したmiRNAはそれぞれ91、51種、減少したものはそれぞれ64、81種であった。さらに変動が見られたmiRNAについて、個体数や投与量を増加して解析し、尿及び血液ではCdにより減少するものがそれぞれ4種認められ、増加するものは血液のみ1種認められた。 次にラットを4群に分け、Cd溶液をそれぞれ0、1、2、5mg Cd/kg、5週間経口投与した。解剖前日に代謝ケージに移し、24時間尿及び血液からエクソソームを回収して、miRNAのプロファイリングを行った。プロファイリングは0と5mg投与したラットの試料を使用した。その結果尿及び血液では、Cdによって増加したものはそれぞれ85、87種、減少したものはそれぞれ77、61種であった。さらに変動が見られたmiRNAについて、4群を解析し、尿において濃度依存的に減少又は増加するmiRNAが1種ずつ認められた。 尿及び血中エクソソームのこれらmiRNAはCdにより増減するため、これらのmiRNAはCdの影響を受けていることが考えられ、Cdの曝露指標となることが考えられる。
|