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2020 年度 実施状況報告書

滲出液の成分変化に着目した新たな栄養状態評価法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 20K21731
研究機関東京農業大学

研究代表者

山根 拓実  東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (80637314)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワードタンパク質栄養 / 創傷 / 褥瘡 / サイトカイン / ホルモン
研究実績の概要

褥瘡の治癒はタンパク質栄養状態と密接な関係があるため、摂食によって体内のタンパク質栄養状態がどのような状態であるか常時把握する必要がある。現在の方法は、血液を採取し、血液中の様々な因子の変動から栄養状態が評価されている。しかしながら、採血は高齢者にとっては、体力的に負担であり、また医療従事者にしかできない方法である。さらに、血液からの感染リスク、医療廃棄物など様々な問題も抱えている。そこで、申請者は簡便で誰にでもでき、さらに痛みの少ない栄養状態の診断方法を開発すべく、創部からサンプリング可能な滲出液中のタンパク質に着目した。本研究課題では、分子栄養学的手法でラットを用いた動物実験を行う。実験方法は、Wistar系雄性ラットを用いて、タンパク質源として20%のカゼインを摂取する群(コントロール群)及び2%のカゼインを含む低タンパク質食を摂取する群に群分けし、サイトカインアレイにより滲出液の成分変化を比較する。初年度は、3日間の試験食を摂取させた後、ラット背部に創を2ヶ所作製し、創作製後3日目に滲出液のサンプリングを行った。群ごとに滲出液をプールしてサイトカインアレイを行ったところ、79個のタンパク質の変動が認められた。同定した分子の中でも、Neprilysin、IL-1ra及びSerpinE1が低タンパク質食摂取群で顕著に減少を認めた。したがって、Neprilysin、IL-1ra及びSerpinE1が短期的な低タンパク質栄養状態を評価するマーカーとなる可能性が示唆された。現在、長期的に低タンパク質食を摂取したラットの滲出液を用いて、解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Wistar系雄性ラットを用いて、タンパク質源として20%のカゼインを摂取する群(コントロール群)及び2%のカゼインを含む低タンパク質食を摂取する群の2群に群分けを行った。3日間の試験食を摂取させた後、ラット背部に創を2ヶ所作製した。毎日創洗浄及びドレッシング材の交換を行い、創作製後3日目に滲出液のサンプリングを行った。群ごとに滲出液をプールしてサイトカインアレイを行ったところ、79個のタンパク質の変動が認められた。コントロール群に比して、低タンパク質食摂取群でNeprilysin、IL-1ra及びSerpinE1が顕著に減少を認めた。したがって、Neprilysin、IL-1ra及びSerpinE1が短期的な低タンパク質栄養状態を評価するマーカーとなる可能性が示唆された。現在、長期的に低タンパク質食を摂取したラットの滲出液を用いて、解析を行っている。コロナウィルス蔓延により、研究室への入構や研究活動が制限されたため、十分な実験を行うことが出来なかったため、進捗状況はやや遅れている。

今後の研究の推進方策

現在、申請者は短期及び長期的なタンパク質栄養の悪化で変動し、滲出液マーカーとなり得る分子候補をサイトカインアレイにより絞り込むことには成功している。しかしながら、同定したタンパク質の再現性をELISAで確認するに至っていない。次年度は、ELISAで再現性を確認し、それらの滲出液マーカーと体重及び血中プレアルブミンやアルブミンとの相関を検討する。また、低タンパク質栄養状態のラットに、正常食を再摂食させ、初年度同定した滲出液マーカーの変動をELISA法にて解析する。

次年度使用額が生じた理由

初年度は、コロナウイルス蔓延により、研究室への入構や研究活動が制限されたため、十分な実験を行うことが出来なかった。また、コロナウイルス蔓延は海外で生産されるキットの納品にも影響をもたらした。さらに、学会もオンライン開催や中止になり旅費の支出がなくなった。現在、解析中の長期的に低タンパク質食を摂取したラットの滲出液では、多くの分子が変動しているため、次年度はELISAに対する支出が多くなることが予想される。学会に関しても多くがオンラインで開催されているため、関連学会には積極的に参加し、発表や情報収集を行う予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Establish of nutritional markers in wound fluid as a simple and quick method that replace a blood test2021

    • 著者名/発表者名
      Takumi Yamane, Honoka Cho, Yuka Takei, Nonoka Tenjin, Ken Iwatsuki, Yuichi Oishi
    • 学会等名
      9th Asia Pacific Enterostomal Therapy Nurse Association Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 低タンパク質栄養状態により誘導されるFGF21が創傷治癒に及ぼす影響2020

    • 著者名/発表者名
      山根拓実
    • 学会等名
      日本外科代謝栄養学会第57回学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] アミノ酸スコアの異なるタンパク質摂取が全層欠損創モデルラットに及ぼす影響2020

    • 著者名/発表者名
      山根拓実, 岩槻健, 大石祐一
    • 学会等名
      日本アミノ酸学会第14回学術大会
  • [学会発表] アミノ酸スコアの異なるタンパク質摂取が創傷治癒に及ぼす影響2020

    • 著者名/発表者名
      山根拓実, 岩槻健, 大石祐一
    • 学会等名
      第50回日本創傷治癒学会
  • [学会発表] Hydrocellular foam dressing貼付が創傷治癒関連遺伝子に及ぼす影響2020

    • 著者名/発表者名
      山根拓実, 仲上豪二朗, 真田弘美, 大石祐一
    • 学会等名
      第22回日本褥瘡学会学術集会
  • [図書] BIO Clinica2021

    • 著者名/発表者名
      大石祐一,山根拓実
    • 総ページ数
      148
    • 出版者
      北隆館
  • [備考] 東京農業大学 教員・研究者情報

    • URL

      http://dbs.nodai.ac.jp/view?l=ja&u=100000791

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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