研究実績の概要 |
肥満により質・量ともに変化する体内の脂質環境が癌細胞に及ぼす影響について検証するために、以下の実験結果を取得した。1)高脂肪食(HFD)を給餌した肥満マウスに、メラノーマ細胞を移植する担癌モデルを作成し癌の浸潤や転移についてコントロール給餌群(CD)と比較評価している。HFD群でCD群に比べて癌の浸潤や転移が促進される傾向がみられているため、現在n数を増やして解析を行っている。2)メラノーマ細胞株やグリオーマ細胞株に対して各種長鎖脂肪酸添加実験を行ったところ、他の脂肪酸種に比べてオレイン酸処理により腫瘍細胞の増殖が有意に亢進していた。さらにオレイン酸は細胞内脂質滴形成を顕著に促すことや増殖関連遺伝子群の発現を誘導すること、などを明らかにし論文投稿中である。3)グリオーマ細胞に高い発現を示す脂肪酸結合タンパク質7型(FABP7)が、野生型IDH1GB細胞の核に豊富に局在し、GBの膜脂質ラフトの1つであるカベオラの機能を介して細胞増殖を制御していることを明らかにし論文発表した(Kagawa et al., Mol Oncol 2022)。 また本研究で作成した担癌マウスを用いて、天然由来成分であるクルクミンの類縁体GO-Y030が、腫瘍周囲に集積する制御性T細胞(Tregs)内の代謝活性や免疫抑制能力に重要な役割を果たすmTORシグナル活性を変化させTregによる腫瘍免疫抑制活性を阻害することを明らかにし論文発表した(Maruyama et al., Cancer Sci)。
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