本研究課題では、チロシン水酸化酵素(Th)遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化修飾をエピゲノム編集により操作し、Th遺伝子の発現やドーパミン合成のされやすさを人為的に調節することを試みている。
ラット由来のドーパミンニューロンの培養細胞であるN27細胞およびラット副腎褐色細胞腫由来のPC12細胞を用いて検討した。Thプロモーター領域を標的とする6種類のガイドRNAを設計し、DNA脱メチル化誘導ベクターであるCRISPR-CAS9-TET1CDとともに、lipid nanoparticle(LNP)を用いて細胞に導入した。3日間培養後、細胞からゲノムDNAを抽出し、バイサルファイト処理後methylation-specific PCR (MSP)を行い、DNAメチル化修飾レベルを解析した。N27細胞、PC12細胞ともに、エピゲノム編集によりDNAメチル化レベルが有意に低下しており、培養細胞レベルではThプロモーター領域のDNA脱メチル化誘導ができることが確認できた。マウスの視床下部におけるエピゲノム編集の試みも現在行っている。Th プロモーター領域を標的とするガイドRNA とDNA脱メチル化誘導ベクターであるCRISPR-CAS9-TET1CDをLNPを用いて視床下部に注入した。現在、Th遺伝子のDNAメチル化レベルの変化を誘導するために最適な投与量等の条件を検討している。DNA脱メチル化誘導ができる条件を十分に検討後、脱メチル化による体重や摂食行動などへの影響を解析することを予定している。
マウス個体レベルでのエピゲノム編集の導入を成功させるところまでは間に合わなかったが、細胞レベルでのThプロモーター領域のDNA脱メチル化誘導まではできることが確認できた。今後も継続してこの研究を行い、in vivoでの導入を可能にしたい。
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